暦をめくるように、季節で貌（かお）を変える庭木や下草

夏という季節はいつも、忙しく、せっかちで、こちらが油断している間にするすると走り去ってしまうのだ。夏だけじゃなくて、夏ほどじゃないけれど、他の季節もみんな速足だ。ゆっくりとのんびりとあたしたちと一緒に歩いたりはしてくれない。 　それは十八歳というあたしたちの年齢と関係あるのだろうか。それとも幾つになっても、季節はそっけなく近づいてきたと思ったら、あっという間に背を向けて遠ざかっていくものなのだろうか。今のあたしにとって、季節はこんなにも早熟で、あまりにも早く老いていく。

カフェテリアの入口は、そのまま夏の入口に見える。まだ何者でもない大学生が行き交う場所でも、同じ速度で季節は変わっていく。

桜が散り、新芽が顔を出し、木蓮が満開になり、季節が段階を踏んで移っていった。日々は規則正しく、滑らかに、こともなく流れていった。

春にはじまり、夏が来て、秋が過ぎたら冬

まる一日、何も予定はない。

慌てふためく

信号で停車する。ウィンカーの焦れるようなせっかちな音が、久遠たちを急かしているようだった。

（六月になる）ゆっくりと空を流れる雲のように、五月が窓の外を過ぎ去っていった

下で三時の鳩時計が鳴っている。