栄子は昔の印象の通りの、どこか優雅な怠惰さをたたえていた。

夜中の食欲は 悪霊 だ。個人の人格と独立して機能している。 　アルコールも、暴力も、ドラッグも、恋愛も。多分、ダイエットすら。 　 耽溺 はみんな同じだ。 　善悪ではない、生きている。そしてやがて飽きる。飽きるか、取り返しがつかなくなるか。そのどちらか。 　飽きると知っていても波のようにくりかえしやってくる。姿形を変え、浜を洗い、よせてはかえし、静かに、激しく。 　くりかえす、過ぎていく。 　遠い風景。緊張と緩和がもたらす人生の、永遠の海辺。

昼夜が完全に逆転した不規則な生活が続く

春先の暴飲暴食がたたって、五キロも太った。五、という数字よりも、体重が生まれて初めて五十の大台にのったことが、さすがにショックだった。未知の体重には未知の考え方があるのかと思ったくらい、自分の体を重く感じた。

だらしのない男で、つまらぬ女に引っかかったり

固い豆粒は胃の膜壁にあたって一つ一つその粒が感じられるようにも思える。

肩が無闇と凝った。頭が重く、首筋を握ると、ジキジキと気持の悪い音がした。

気持にも 身体からだ にも異常な疲労が来た。彼はもう何も考えられなかった。

（紙で切る）紙できれて指にするどい痛みが走り人差し指の第二関節に細い血の線が浮かび上がる。

頭が火照ったまま、ふくらみ切ったように重く感じる