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悲痛さは、日々そのかたちが曖昧になって、少しずつ、音もなく崩れていっているように感じられた。時の流れの中に 零れ落ちていって、少なくとも心は軽くなってゆきつつある。そのお陰で、自分が危機から遠ざかりつつある安堵を覚えてはいたが、死の直後の恐ろしい寂しさとはまた違った、ゆっくりと染み入るような寂しさを、時折、からだの深い奥で感じた。
平野啓一郎「ある男」に収録 ページ位置:48% 作品を確認(amazon)
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喪失感(大切なものを失う)
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前後の文章を含んだ引用
......着を抱いていた。母親として何をしてやれるのか、里枝はいつも考えていたが、そんな時には、あべこべに彼が生きていてくれて、相談に乗ってくれたならと、心底、思った。 悲痛さは、日々そのかたちが曖昧になって、少しずつ、音もなく崩れていっているように感じられた。時の流れの中に零れ落ちていって、少なくとも心は軽くなってゆきつつある。そのお陰で、自分が危機から遠ざかりつつある安堵を覚えてはいたが、死の直後の恐ろしい寂しさとはまた違った、ゆっくりと染み入るような寂しさを、時折、からだの深い奥で感じた。 里枝は、自分の年齢を以前よりも意識するようになっていた。再婚を勧める者もいないわけではなかったが、それにはただ、「もういいです。」と微笑して首を振るだけだった......
単語の意味
悲痛(ひつう)
安堵(あんど)
曖昧(あいまい)
悲痛・・・悲しすぎて胸が痛い。心が痛いほどの悲しみ。
安堵・・・安心すること。心配事がなくなって緊張から解放されること。
曖昧・・・はっきりしないこと。明確さに欠けるさま。「曖」も「昧」も訓読みで「くら(い)」と読める。
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喪失感(大切なものを失う)の表現・描写・類語(悲しみのカテゴリ)の一覧 ランダム5
この世が終わるような喪失感
吉本 ばなな / とかげ「とかげ (新潮文庫)」に収録 amazon
弟のいない暮らしは、音のない映画みたいに、なにかが欠けている感じがした。
吉本 ばなな「アムリタ(下) (新潮文庫)」に収録 amazon
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時間が解決してくれるの表現・描写・類語(時間・スピードのカテゴリ)の一覧 ランダム5
喪失感そのものがぼやけ、おぼろなものになり、やがて芝居のように静かな終幕を迎える時がくるのをじっと待つ
小池真理子「愛するということ (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
祖父江の意識は未だ戻らず、ただでさえ落ち着かなかったが、日常はその不慮の出来事をも、蛇のような大口で飲み込んで、ゆっくりと消化しつつあった。その重たさが、時間の流れを停滞させ、蒔野の胸を圧迫していた。
平野 啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」に収録 amazon
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「心」の言葉を含む悲しみの表現・描写・類語(時間・スピードのカテゴリ)の一覧 ランダム5
(日記の)全体が持っている悲しい心が、通って行く雲の影のように彼の胸を閉ざして行った。
大仏 次郎 / 宗方姉妹 (1954年) amazon
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伯母は混乱した様子ではなかった。むしろ悲しみが極まって透明になったような瞳は、りりしく毅然として見えた。
小川 洋子 / 一つの歌を分け合う「口笛の上手な白雪姫」に収録 amazon
「生と死」カテゴリからランダム5
(首を絞めた相手の)身体から力が抜けていた。魂が蒸発してしまったかのようだった。
伊坂 幸太郎 / ラッシュライフ amazon
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ずっと昔に死んでしまった時間の断片
村上 春樹 / 1973年のピンボール amazon
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