玄関の散らばっている靴は足先でどける

奈良漬色の畳にがたがた障子の嵌（はま）っている部屋

ホール全体が水族館じみて、ガラス張り水槽の明るさがある

柱は歪み、畳はボロボロ

お城のようなまぶしい輝きのある部屋

鈍い電燈の中でチラッとビンの角が光る

すりガラスの窓越しに誰かの頭がひょこひょこと動いていて、狭い箱型の空間に人が入っているだけでたちあがる生活感の強さに、彼は地方も東京も変わらないと思う。

ひとりのときに部屋を貫くように差し込んでくる太陽は嫌いだ。ひとりのあたしに、あたしはひとりだとまんまと思わせるからだ。窓から外を見たりなんかすると、アスファルトでさえ宝石でも紛れ込ませているかのようにきらきらしているように見える。太陽は、ひとりの自分を嫌いになるようにしむけてくる。

庭とも呼べないほどの狭い空間

話が途切れ、居心地わるくなった。