煙草の火はだんだん吸口の方へ逼 って、一寸 ばかり燃え尽した灰の棒がぱたりと毛布の上に落つるのも構わず主人は一生懸命に煙草から立ち上 る煙の行末を見詰めている。その煙りは春風に浮きつ沈みつ、流れる輪を幾重 にも描いて、紫深き細君の洗髪 の根本へ吹き寄せつつある。
夏目漱石 / 吾輩は猫である ページ位置:29% 作品を確認(青空文庫)
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タバコ
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前後の文章を含んだ引用
......れだけである。もっとも彼がフケだらけの頭の裏 には宇宙の大真理が火の車のごとく廻転しつつあるかも知れないが、外部から拝見したところでは、そんな事とは夢にも思えない。 煙草の火はだんだん吸口の方へ逼 って、一寸 ばかり燃え尽した灰の棒がぱたりと毛布の上に落つるのも構わず主人は一生懸命に煙草から立ち上 る煙の行末を見詰めている。その煙りは春風に浮きつ沈みつ、流れる輪を幾重 にも描いて、紫深き細君の洗髪 の根本へ吹き寄せつつある。――おや、細君の事を話しておくはずだった。忘れていた。 細君は主人に尻 を向けて――なに失礼な細君だ? 別に失礼な事はないさ。礼も非礼も相互の解釈次第でどうでも......
単語の意味
吸い口・吸口(すいくち)
春風(はるかぜ・しゅんぷう)
吸い口・吸口・・・1.タバコや笛などの、口にくわえる部分。
2.汁ものに浮かべたり、煮ものに添えて、香りや味わいを加えるもの。
2.汁ものに浮かべたり、煮ものに添えて、香りや味わいを加えるもの。
春風・・・春に吹く風。東または南から吹く暖かて穏やかな風。
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タバコを、足下に置かれた空き缶の中にぽんと放り込み、
池井戸潤「下町ロケット (小学館文庫)」に収録 amazon
口の中がざらざらして気持が悪かった。案の定、煙草はまずかった。
五木寛之 / 夜の斧 amazon
指先には火の点いていない煙草がはさまれ、その先端は空中に幾つかの複雑な、そして意味のないもようを描きつづけている。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
(吸い殻)朝日(たばこの銘柄)の吸い口がペンキの杭のように突きさしてあって、どれもこれも薄く紅がついている。
林 芙美子 / 風琴と魚の町/清貧の書 amazon
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食堂の時計が引きしまった音で三時を打った。
有島武郎 / 或る女
梶井基次郎 / ある心の風景
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