私の美に対する情熱が娘に対する情熱と胎（たい）を共にした双生児だったことが確かに信じられる

自分の中に何かが芽生えるのを感じた。 　たとえて言えば、気持ちのいい春の 宵、あまりよく知らないけれど好意を持っている女性と待ち合わせをしていて、どこに食事に行こうか、飲みに行こうかと考えながら電車に乗っているときのような浮かれた感じ、今晩やれるかやれないかとかまったく考えなくても、そのひとの整った立ち居ふるまい、私のために装われたスカーフの 柄 とかコートのすそとか笑顔とかをみていると、まるで遠くの美しい風景を見ているように、自分の心までもがきれいになったような気分になれる感じ、ずっと失われていたそういううきうきするものがそのとき、 香るようにふっとよみがえったのだ。

洋子は、蒔野を愛することによって美しくなり、これから蒔野に会うために美しいのだと、三谷は感じた。

身も心も 焦げる思い

私の恋愛にはユーミンの曲が常に寄り添っていた

検印を押すようにキスをした。

広田さんのことを思うと、私の中に不思議なエネルギーが満ちているのを感じた。薄明るくて白くとても静かで柔らかい澄んだ泉のようなエネルギーがこんこんとわいてきていた。

二人（ふたり）の幸福はどこに絶頂があるのかわからなかった。二人だけで世界は完全だった。

スタンはバラの花束とレコードを抱えて交差点に立っている。

（好きな人と二人きりになる）ちょっと前から、ほんの少しずつ顔を出し始めていた感情が、めりめりと、その皮を剝ぎ始めているのが分かる。 　冷房の風が、ゆっくりと、愛子の頭の上を往復する。体の中にある熱を鎮めてくれるはずの冷たさは、あっという間に消えてしまう。すぐ隣に、人間の体温をたっぷりと宿した、大地の体があるから。