(夜の病院)まだ八時前だというのに外来受付の明かりが消されてしまった待合ホールは、薄暗い蛍光灯の中、古びたベンチが並んでいる。 昼間、ここで百人を超す人々が順番待ちをしていたとは思えないほど狭い。 人々の姿が消え、夜間の待合ホールに残されているのは、古びたベンチと、カラフルなペンキで床に示された各病棟への矢印だけだ。 ピンク色の矢印は産婦人科へ。黄色い矢印は小児科へ。そら色の矢印は脳外科へ。 薄暗い蛍光灯の下、カラフルな矢印だけが華やいで見える。カラフルな矢印だけが場違いに見える。
吉田修一「悪人」に収録 ページ位置:28% 作品を確認(amazon)
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病院
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前後の文章を含んだ引用
......流れている。重く、寂しいだけではない。もちろん、陽気で、楽しいわけでもない。 その夜、金子美保は待合室のベンチに腰を下ろすと、病室から持ってきた雑誌を広げた。 まだ八時前だというのに外来受付の明かりが消されてしまった待合ホールは、薄暗い蛍光灯の中、古びたベンチが並んでいる。 昼間、ここで百人を超す人々が順番待ちをしていたとは思えないほど狭い。 人々の姿が消え、夜間の待合ホールに残されているのは、古びたベンチと、カラフルなペンキで床に示された各病棟への矢印だけだ。 ピンク色の矢印は産婦人科へ。黄色い矢印は小児科へ。そら色の矢印は脳外科へ。 薄暗い蛍光灯の下、カラフルな矢印だけが華やいで見える。カラフルな矢印だけが場違いに見える。 ときどき入院患者たちがホールを足早に横切って、たばこを吸いに外へ出ていく。九時になれば、ここ正面玄関は施錠され、喫煙所へ出られなくなるからだ。点滴のポールを押......
単語の意味
蛍光(けいこう)
姿・形・容・態・躰・體・軆・骵(すがた)
蛍光・・・1.蛍の光。ほたる火。
2.(物理学)ルミネセンスの一種。ある物体に光やエックス線を当てたとき、その物体が別の光を出す現象。また、その光。
2.(物理学)ルミネセンスの一種。ある物体に光やエックス線を当てたとき、その物体が別の光を出す現象。また、その光。
姿・形・容・態・躰・體・軆・骵・・・1.身体の形。からだつき。人のからだの格好。衣服をつけた外見のようす。
2.身なり。容姿。
3.目に見える、人の形。人の存在。
4.物の、それ自体の形。物一つ一つの全体的な印象。
5.物事のありさまや状態。事の内容を示す様相。
以下の文字は訓読みで、「すがた」と読める。
[形・容・態・躰・軆・體・骵]
2.身なり。容姿。
3.目に見える、人の形。人の存在。
4.物の、それ自体の形。物一つ一つの全体的な印象。
5.物事のありさまや状態。事の内容を示す様相。
以下の文字は訓読みで、「すがた」と読める。
[形・容・態・躰・軆・體・骵]
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モグリかと思うくらいあじけない治療院
吉本 ばなな / とかげ「とかげ (新潮文庫)」に収録 amazon
(病院は古めかしい木造の建物で)病院特有の強い消毒液の匂いはなく、そのかわり汗と果実のまじりあったような臭気に満ちていた。
宮本 輝 / 螢川「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 amazon
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ちょうど昼食どきなので、広い店の大半のテーブルはふさがり、給仕はいそがしそうにお皿をかかえて、テーブルの間をぬって歩いていた。
石井 好子「巴里の空の下オムレツのにおいは流れる (河出文庫)」に収録 amazon
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カーテンの向こうは、冷たい光を反射するリノリウムの床に医療機器や酸素ボンベなどが雑然と置かれた処置室だった。
雫井 脩介「火の粉 (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
陰気な、暗い重症患者室
松本 清張 / 与えられた生「松本清張ジャンル別作品集(3) 美術ミステリ (双葉文庫)」に収録 amazon
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