勝手口を開けてみると、錆 びた鑵詰 のかんからがゴロゴロ散らかっていて、座敷の畳が泥で汚れていた。昼間の空家は淋しいものだ。薄い人の影があそこにもここにもたたずんでいるようで、寒さがしみじみとこたえて来る。
林芙美子 / 新版 放浪記 ページ位置:3% 作品を確認(青空文庫)
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空き家
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前後の文章を含んだ引用
......文化住宅の貸家があったので這入ってみる。庭が広くて、ガラス窓が十二月の風に磨いたように冷たく光っていた。 疲れて眠たくなっていたので、休んで行きたい気持ちなり。勝手口を開けてみると、錆 びた鑵詰 のかんからがゴロゴロ散らかっていて、座敷の畳が泥で汚れていた。昼間の空家は淋しいものだ。薄い人の影があそこにもここにもたたずんでいるようで、寒さがしみじみとこたえて来る。どこへ行こうと云うあてもないのだ。二円ではどうにもならない。はばかりから出て来ると、荒れ果てた縁側のそばへ狐のような目をした犬がじっと見ていた。 「何でもないんだ......
単語の意味
錆・銹・鏽(さび)
錆・銹・鏽・・・金属が空気に触れたり水に濡れたりして傷み、赤茶色や青白色に変色し脆(もろ)くなったもの。空気中や水中で金属が酸化し表面にできる、酸化物質や水酸化物質。
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勝手口を開けてみると、錆 びた鑵詰 のかんからがゴロゴロ散らかっていて、座敷の畳が泥で汚れていた。昼間の空家は淋しいものだ。薄い人の影があそこにもここにもたたずんでいるようで、寒さがしみじみとこたえて来る。
林芙美子 / 新版 放浪記
(空き家に入る)主のいない家は沈黙していた。電気もガスも切れていることが空気を通して分かるような、そんな生命感のなさが感じられた。
雫井 脩介「火の粉 (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
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屋根に草が生 えたうち
夏目漱石 / 吾輩は猫である
戦災に焼け残った店がかたまっていて、町そのものも、むかしの東京の面影を色濃くとどめている。
池波 正太郎「むかしの味 (新潮文庫)」に収録 amazon
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