写真機のシャッターがおりるように、庭が急に闇になった。

暗い海のように広がる夜の闇

まっくらで、深い森の中を歩いているよう

海のように底知れぬ暗黒

やや淡い薄暗がり

（道頓堀川）夜、幾つかの色あざやかな光彩がそのまわりに林立するとき、川は実像から無数の生あるものを奪い取る 黯 い鏡と化してしまう。不信や 倦怠 や情欲や野心や、その他まといついているさまざまな 夾雑物きょうざつぶつ をくるりと 剥いで、鏡はくらがりの底に簡略な、実際の色や形よりもはるかに美しい虚像を映し出してみせる。

窓から明かりがボンヤリと漏れる

店屋の明りは、二人が歩いている間にも、歯が抜けるように、あっちこっちで消えていき

街灯が人影のない通りを明るく照らし出している。

（この後自殺する女の暗示）空の色に比べて、彼女の影が薄かった。唇が蒼く、目は赤かった。