この夜空のところどころにときどき大地の底から発せられるような奇矯 な質を帯びた閃光 がひらめいて、琴 のかえ手のように幽毅 に、世の果ての審判 のように深刻に、夜景全局を刹那に地獄相 に変貌 せしめまた刹那にもとの歓楽相に戻 す。それは何でもない。間近い城東電車のポールが電力線にスパークする光
岡本かの子 / 渾沌未分 ページ位置:46% 作品を確認(青空文庫)
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電車・汽車
火花・火の粉
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前後の文章を含んだ引用
......踊りつ、打ち合いつ、砕 けつする光の反射面のようである。特に歓楽の激しい地域を指示するように所々に群 るネオンサインが光のなかへ更に強い光の輪郭 を重ねている。さらにこの夜空のところどころにときどき大地の底から発せられるような奇矯 な質を帯びた閃光 がひらめいて、琴 のかえ手のように幽毅 に、世の果ての審判 のように深刻に、夜景全局を刹那に地獄相 に変貌 せしめまた刹那にもとの歓楽相に戻 す。それは何でもない。間近い城東電車のポールが電力線にスパークする光なのだが、小初は眺 めているうちに――そうさ、自分に関係のない歓楽ならさっさと一閃 きに滅 びてしまうがいい、と思った。そのときどこからともなく、ハイヤーの滑 って来る......
単語の意味
閃光(せんこう)
歓楽・懽楽(かんらく)
夜景(やけい)
夜空(よぞら)
変貌(へんぼう)
刹那(せつな・せちな)
閃光・・・閃(ひらめ)く光。一瞬に放たれる強烈な光。瞬間的な強い光。「閃く」は「一瞬、鋭く光る」という意味。
歓楽・懽楽・・・喜んで楽しむこと。
夜景・・・夜の景色。
夜空・・・夜の空。
変貌・・・貌(かたち)が変わること。姿を変えること。見た目の様子などがすっかり変わること。変容(へんよう)。「貌」は、訓読みで「かお」「かたち」と読める。
刹那・・・1.仏教の時間の概念で最小の単位。ちょっとの間。きわめて短い時間。一瞬。指を人はじきする短い時間(=弾指[だんし]という)に65刹那あるという。 ⇔ 劫(こう・ごう)。
2.数の単位としては、弾指の10分の1。
2.数の単位としては、弾指の10分の1。
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今にも錆びつきそうなもの哀しい二両編成の郊外電車
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
車輪の動く音や、ロッドの動き、蒸気機関車であれば煙突から噴き出る、隆起した筋肉を思わせる立体的な黒煙、レールを走りぬける響き、何よりも疾走する鉄の電車の迫力、そういったものが伝わってくると興奮する。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
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火花・火の粉の表現・描写・類語(火・煙・灰のカテゴリ)の一覧 ランダム5
空は真赤に燃えさかって火の粉が、高く空できらきらと金泥のように輝いていた。
石川 達三 / 日蔭の村 amazon
七輪から 弾け散る炭の火花が、無数の螢となって竜夫の前で飛んでいた。
宮本 輝 / 螢川「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 amazon
長い鉄の火箸 に火の起こった炭をはさんで高くあげると、それが風を食って盛んに火の子を飛ばす
有島武郎 / 生まれいずる悩み
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(船の家)水に浮いている家の、いかにも頼りない感触が足元に漂っていた。
宮本 輝 / 泥の河「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 amazon
「火・煙・灰」カテゴリからランダム5
炬火の火が闇の中に不気味に燃えながら近づいてきました。
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 amazon
青い焔が燃え、赤い表紙が生き物のように反り始め
梅崎 春生 / 桜島 amazon
悪魔の舌のような焔(ほのお)
川端 康成 / 掌の小説 amazon
煙の頂きは高く昇ってうっすらと夕べの雲に紛れ、東の空に薄(すすき)の穂のようにたなびいた。
福永 武彦 / 廃市/飛ぶ男 amazon
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