生徒は子供のうえに、なまいきで、規律を破らなくっては生徒の体面にかかわると思ってるやつらだから

すべてをコントロールしなくては気が済まないような振る舞い

買いたけりゃ売ってやるという態度

右手の人さし指と中指の間にマルボロをはさみ、腕を組み、テーブルの下で足を組んで、ふんぞり返るような姿勢でわたしを見ながらそんなことを言ってくる菜穂子は、どこかナチの美人将校を思わせた。

乞食にでも物を言う時のような横柄な態度

神経を尖らせて対応する

どうでもいいような日用品が、気づけば一〇年も二〇年も使われている。資源を大切にするだとか使い込んで味を出すとかいうのとも違い、樹脂の劣化したうがい用コップやら座布団やマグネットなんかが、広い家の中で永い間、ほとんどそのことを誰にも意識されずにただそこに在るのだ。日常の亀裂の中に、過去が平然と入り込んでいる。

鬼よりも血が冷たかろう。孤独な人間は、こうなるのが当りまえ。

内気な性格らしく神経質にこちらを一瞥するだけで目は合わせない

自分らの生活が予定通りはじまっているというわけだが――伸子は、しかし、何だかその生活に、自分を馴らしてしまうことができずにいるのであった。例えばある一つの晩餐会がここにある。料理は勿論、金縁の献立通りに燕尾服の給仕によって運ばれている。招かれぬ客もいないし、主賓が欠けているわけでもない。乾盃から卓上演説まで、すべて遺漏なくプログラム通り運ばれている。しかも、始めから終りまでその席に連なり、プログラムの予定通りの進行の証人となっているうち、その会合全体のうちに、自分が何の趣味も意味も感ぜず、突然変な不安にうながされて周囲を眺めまわすような場合がある。はたの誰一人、自分の感じるような屈託は持っていないと云う発見で、彼は自分を慰め得るであろうか。逆に、ますます自分のその場にそぐわない感じを強めるのであろう。 　伸子もそれなのであった。