（赤んぼは）火にあぶったスルメのように、ふんぞり返ってしまって

（午後の穏やかな日差しが射す部屋で、）長椅子の上に横たわった。 　彼女の両手は組合わされて頭の下にあった。その下にクッションがかさなって柔かく心持よく押しつけられている。肱かけの部分が高いので、長椅子は彼女の眼のところに程よい陰翳を与えた。暖かい……室内は絶対に物音せず、わずかに、開いた窓から気にならない程度に市街のどよめきが流れて来る……神経を撫で和らげられるので、伸子は眠いようになった。

虫が死んだように、横になったまま動かない

私はまっさらのシーツと毛布の間にすべりこんだ。

豚のようにゴロゴロしていた

身を仰け反らせ、今度は背もたれの反動で身を乗り出しながら

ぼんやりと座っている

（大きな本堂の片隅に）一疋の蟻のように小さく坐って

背なかを丸くして、坐禅をくむように手を重ねたきり

糸杉の樹が生えたように、スックと立った長身の体

精神に破綻をきたすほどの悪夢

とろりとした。体の節々がとろけるようになり、心が暗い遠い居心地よいとこへ引き込まれるようだ。

夜中、私がベッドに入ったあとも、弟は泣きやまなかった。そして何をいってるかはわからなかったが母の低い語りかけと、弟の大泣きは壁を通してもう暗い私の部屋に聞こえていた。 　永遠に続くお経みたいだった。

眠っているときにしばしば見せる夢のような笑顔

眠りは漂う煙のように音もなく訪れ、彼女の全身を包む。