雪が激しさを増した。コートのジッパーを一番上まで上げて、マフラーを花の上でぐるぐる巻いた。それでも寒かった。

雪の音かしら、窓に何かササササと当っている音がしている。

日光と雲との明暗（キャロスキュロ）にいろどられた雪の重なりには、熱愛をもって見きわめようと努める人々にのみ説き明かされる貴（たっと）いなぞが潜めてあった。

粉雪が夏の虫のように舞い狂っている

（雪の積もった階段）砂糖菓子を崩すようにそろそろと、一段めに積もった雪を踏んだ。

空気はきりっとして澄み渡り、街角のいたるところに蟻塚のようにつみあげられ、排気ガスで灰色に染まった雪も、夜の街の光の下では清潔で、幻想的にさえ見えた。

雪が吸いとられるように土に消える

小降りになったり 烈しく吹きつのったりしながら、雪はいっこうにやむ気配を見せなかった。道行く人はみな 外套 を白く染め、身を 屈かがめて急いでいた。

雪が放つ冷たくやさしい光

海岸べりには 雪庇せっぴ を屋根から突き出した民家がまだらな雪をかぶって並んでいた。雪と風の中でそれらは黒ずんでひっそりとしていた。