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(記憶喪失後、昔の写真アルバムを見るがはっきり思い出せない)本棚から、アルバムを出した。 記憶が最も混乱していたころ、私は何度もここに来て、ひとりで、夜中の台所でこれを開いた。 見れば見るほど近くて遠く、懐かしさやもどかしさがいつも 焦りになって襲ってきた。前世のふるさとを訪れたりしたらこういう気持ちがするのかな、と思った。 私の顔をした私が、私よりもずっと私らしく笑っていたり、もういない妹が私のスカートのすそをつかんでいたり、そういう感じ。 まるで目に見えない世界が、この世のどこか決して届かないところでそのまま息づいているようなせつない感じ。
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 ページ位置:29% 作品を確認(amazon)
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忘れる・思い出せない・曖昧な記憶
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前後の文章を含んだ引用
......くさんあるわよ。」 純子さんは言った。「お母さんは?」「デートよ。」「そう。」 私はうなずいた。純子さんはごはんの支度を始めた。私は何の気なしに、TVの下にある本棚から、アルバムを出した。 記憶が最も混乱していたころ、私は何度もここに来て、ひとりで、夜中の台所でこれを開いた。 見れば見るほど近くて遠く、懐かしさやもどかしさがいつも焦りになって襲ってきた。前世のふるさとを訪れたりしたらこういう気持ちがするのかな、と思った。 私の顔をした私が、私よりもずっと私らしく笑っていたり、もういない妹が私のスカートのすそをつかんでいたり、そういう感じ。 まるで目に見えない世界が、この世のどこか決して届かないところでそのまま息づいているようなせつない感じ。 少し前の私は、そういう目でこのアルバムを見ていた。でも今夜は少し違った。「父」を捜した。 私と真由の父は、脳血栓で倒れて死んだ。意識の戻らないまま、目の前で息......
単語の意味
もどかしい
もどかしい・・・物事が進展しそうなのに進展しない状況が続いて、イライラする。じれったい。
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(記憶の混乱)実際に経験したことと、後から伝聞で知ったことが交錯していて、現実と思い込みの区別がつかない
翔田 寛「真犯人 (小学館文庫)」に収録 amazon
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水島の電話のソフトな口調と、なんとしてでも押し入ろうとする昨夜の男の強引さとが、同じもののネガとポジのように十和子のなかで結びついてしまう。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
家を何日もあけることが多かったので、父にまつわる思い出は、どれもみな感慨の少ない不鮮明なものばかりだった。
宮本 輝「道頓堀川(新潮文庫)」に収録 amazon
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