(心中を図る男女)私と雄一は、時折漆黒の闇の中で細いはしごの高みに登りつめて、一緒に地獄のカマをのぞき込むことがある。目まいがするほどの熱気を顔に受けて、真っ赤に泡立つ火の海が煮えたぎっているのを見つめる。
吉本 ばなな / 満月 キッチン2「キッチン (角川文庫)」に収録 ページ位置:35% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
道連れ・一蓮托生
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......いるようだった。この部屋もまたえり子さんの不在にとまどっているように感じ続けていた。夜は更けて、重くのしかかる。わかち合えるものはなにもない気分にさせる。 ……私と雄一は、時折漆黒の闇の中で細いはしごの高みに登りつめて、一緒に地獄のカマをのぞき込むことがある。目まいがするほどの熱気を顔に受けて、真っ赤に泡立つ火の海が煮えたぎっているのを見つめる。となりにいるのは確かに、この世の誰よりも近い、かけがえのない友達なのに、二人は手をつながない。どんなに心細くても自分の足で立とうとする性質を持つ。でも私は、彼の......
単語の意味
漆黒(しっこく)
漆黒・・・漆を塗ったように光沢のある黒色。濃くて深い黒色。
ここに意味を表示
道連れ・一蓮托生の表現・描写・類語(人生のカテゴリ)の一覧 ランダム5
急流を下るボートに喩(たと)えるなら、俺は今舵をとるのに忙しくて、両手がはなせないんだ。だから君にオールを渡している。もし君ができないというのであれば、ボートは転覆し、俺たちはみんなきれいに破滅するかもしれない。《…略…》ボートから降りるのなら、もっと前に、流れがまだ静かなうちに降りるべきだった。《…略…》急流下りを楽しもう。そして滝の上から落ちるときは、一緒に派手に落ちよう。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
(心中を図る男女)私と雄一は、時折漆黒の闇の中で細いはしごの高みに登りつめて、一緒に地獄のカマをのぞき込むことがある。目まいがするほどの熱気を顔に受けて、真っ赤に泡立つ火の海が煮えたぎっているのを見つめる。
吉本 ばなな / 満月 キッチン2「キッチン (角川文庫)」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
「人生」カテゴリからランダム5
(落ちぶれて行く生活)あゆみは致死的な渦巻きの中心に向かって緩慢な、しかし避けることのできない接近を続けていた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
人生は舞台、あなたは主役
水道橋博士「藝人春秋 (文春文庫)」に収録 amazon
かつては──と僕は思った──僕も希望に燃えた まともな 人間だった。高校時代にはクラレンス・ダロウの伝記を読んで弁護士になろうと志した。成績も悪くなかった。高校三年のときには「いちばん大物になりそうな人」投票でクラスの二位になったこともある。そして比較的きちんとした大学の法学部にも入った。それがどこかで狂ってしまったのだ。 僕は台所のテーブルに頰杖をつき、それについて──いったいいつどこで僕の人生の指針が狂いはじめたかについて──少し考えてみた。でも僕にはわからなかった。とくに何か思いあたることがあったというわけではないのだ。政治運動で挫折したのでもないし、大学に失望したのでもないし、とくに女の子に入れこんだというのでもない。僕は僕としてごく普通に生きていたのだ。そして大学を卒業しようかという頃になって、僕はある日突然自分がかつての自分でなくなっていることに気づいたというわけだ。 きっとそのずれは最初のうちは目にも見えないような微小なものだったのだろう。しかし時が経過するに従ってそのずれはどんどん大きくなり、そしてやがてはそもそものあるべき姿が見えなくなってしまうような辺境に僕を運んできてしまったのだ。
村上春樹 / ねじまき鳥と火曜日の女たち「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon
同じカテゴリの表現一覧
人生 の表現の一覧
暮らしの表現 大カテゴリ