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話したか聞いたかした内容のひとひらだけが、ちらりと脳裏を思わせぶりにゆくことがあり、それをはっと掴むもそれは不思議なもんで、音声として再現される場合もあれば文字として現れることもあるのやけど、しかしその独立したひとひらだけがいつもなぜか思い出されるのであって、それをいつどこで誰といかように話して、その会話なり対話なりがいったいどんな結びを得たかという文脈の累々は奇麗にぶち切れてあるので、じっさいに自分が誰かとした会話なのか、単に本で読んだだけなのか、テレビかなんかで耳に入っただけなのかの真相が壊滅的にはぐれておってそんな始末。
川上 未映子「乳と卵(らん) (文春文庫)」に収録 ページ位置:31% 作品を確認(amazon)
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忘れる・思い出せない・曖昧な記憶
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前後の文章を含んだ引用
......う疑問がひらっとしたが、わたしはなんや、以前にも胸のことについて女の人と話したこと、そういえばあったなあと巻子の話の裏っかわでぼんやりとして、最近はこのように、話したか聞いたかした内容のひとひらだけが、ちらりと脳裏を思わせぶりにゆくことがあり、それをはっと掴むもそれは不思議なもんで、音声として再現される場合もあれば文字として現れることもあるのやけど、しかしその独立したひとひらだけがいつもなぜか思い出されるのであって、それをいつどこで誰といかように話して、その会話なり対話なりがいったいどんな結びを得たかという文脈の累々は奇麗にぶち切れてあるので、じっさいに自分が誰かとした会話なのか、単に本で読んだだけなのか、テレビかなんかで耳に入っただけなのかの真相が壊滅的にはぐれておってそんな始末。でも確か、胸おおきくしたいわあ、とある女の子が云って、わたしじゃなくてそこにはもうひとり別の女の子がおって、その女の子がそれに対してネガティブな物言いをしたんや......
単語の意味
脳裏・脳裡(のうり)
脳裏・脳裡・・・頭の中。心の中。 「裏・裡(うら)」は、「内部」「内側」を意味する。
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忘れる・思い出せない・曖昧な記憶の表現・描写・類語(記憶のカテゴリ)の一覧 ランダム5
病気のせいか、脳味噌のほうも半分分厚い半透明のビニールをかぶったようで 焦れったくなる。
向田邦子 / かわうそ「思い出トランプ(新潮文庫)」に収録 amazon
(記憶は)まるで遠くでゆらめく蜃気楼のようにつかみ所がない
七尾 与史 / 死亡フラグが立ちました! (宝島社文庫) amazon
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言っているうちに、まるで小さい時の思い出みたいに、古い映像みたいにあのひとの面影が、匂いたつようによみがえってきた。まるで恋をしているみたいに、あのときの印象が、目の前に映し出されて切なくなった。
吉本 ばなな「アムリタ(下) (新潮文庫)」に収録 amazon
(曲を聴いて昔の友達の姿が、)びっくりするほど鮮やかに、立体的に浮かび上がってきた。まるでそこにあったいくつかの美しい瞬間が、時間の正当な圧力に逆らって、水路をひたひたと着実に遡ってくるみたいに。
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 amazon
関係が純然たる過去になって詩のように心に残る
志賀直哉 / 濁った頭「志賀直哉小説選〈1〉」に収録 amazon
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