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(失踪した好きな人が残した手紙を読み返す)ぼくは何度も何度もその文章を読んだ。記憶して暗唱できるくらい綿密に読み返した。そしてそれらを読み返しているあいだだけ、ぼくはすみれとともに時間を過ごし、彼女と心をかさねあわせることができた。それはぼくの心を、ほかのどんなものよりも親密に温めてくれた。茫漠とした夜の荒野を抜けていく汽車の窓から、遠くの農家の小さな明かりが見えるように。それはあっという間に背後の闇に吸い込まれて消えてしまう。でも眼を閉じると、その光の点はしばらくのあいだ網膜の上に淡くとどまっている。
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 ページ位置:96% 作品を確認(amazon)
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喪失感(大切なものを失う)
思い起こす・記憶をたどる
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前後の文章を含んだ引用
......シャの島の夜に連れ戻した。 すみれがぼくに残していったのは、いくつかのありありとした思い出のほかには、長い手紙が何通か、それに一枚のフロッピー・ディスクだけだ。ぼくは何度も何度もその文章を読んだ。記憶して暗唱できるくらい綿密に読み返した。そしてそれらを読み返しているあいだだけ、ぼくはすみれとともに時間を過ごし、彼女と心をかさねあわせることができた。それはぼくの心を、ほかのどんなものよりも親密に温めてくれた。茫漠とした夜の荒野を抜けていく汽車の窓から、遠くの農家の小さな明かりが見えるように。それはあっという間に背後の闇に吸い込まれて消えてしまう。でも眼を閉じると、その光の点はしばらくのあいだ網膜の上に淡くとどまっている。 夜中に目を覚まし、ベッドを出て一人がけのソファに沈みこみ、シュヴァルツコップフを聴きながら、あの小さなギリシャの島の記憶をなぞる。本のページを静かに繰るように......
単語の意味
茫漠(ぼうぼく)
暫く・姑く・須臾(しばらく)
茫漠・・・ただ広いだけで無駄な感じ。ぼやけていて不明瞭な感じ。「茫」は「果てしなく広いさま」「ぼんやりしたさま」をあらわす字。
暫く・姑く・須臾・・・1.長いと感じるほどではないが、すぐともいえないほどの時間。ちょっとの間。一時的。
2.ちょっと待った!
2.ちょっと待った!
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思い起こす・記憶をたどるの表現・描写・類語(記憶のカテゴリ)の一覧 ランダム5
三葉として見てきたあの町の風景が、それでもすこしずつ、像を結びはじめる。
新海 誠「小説 君の名は。 (角川文庫)」に収録 amazon
口惜しい想い、嫉妬の記憶が、裾野に霞のかかった春の山の風景さながらに回想される
辻井 喬 / 暗夜遍歴 amazon
記憶が、灯火の消えるときのように、束の間生き生きと燃え上がる
川端 康成 / 掌の小説 amazon
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兎の眼のようなおじけづいた、心配そうな眼
小島信夫 / アメリカン・スクール amazon
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がらんと空虚に銷沈 しがちな心
宮本百合子 / 伸子
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気も狂わんばかりの喪失感
小池真理子「愛するということ (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
いずれにしても、弟はもういない。わたしはこの事実を何回も確認させられた。大学から授業料滞納の通知が届いた時、弟のパジャマを洗濯してアイロンをかけてクローゼットの奥にしまった時、弟のいた病室の扉に別の名札が差し込まれているのを見た時。そのたびにわたしは、「もうわかった。わかったから、そっとしておいて。」とつぶやいた。
小川洋子 / 完璧な病室「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
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幼心には処理しきれないほどのトラウマを背負う
綿矢 りさ / かわいそうだね?「かわいそうだね? (文春文庫)」に収録 amazon
その名前にもはっきり聞き覚えがある。しかし記憶はなぜかひどく漠然としてとりとめがなかった。彼が手で探りとれるのは、事実らしきもののいくつかのあやふやな断片だけだった。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
一句一句をハンマーで棒杭を打つようにたたき込む
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
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