暗黒の空に稲光がぴりぴり裂ける

（闇の中の雷）青い電光（いなびかり）が大地の顔を見せた。

ゼウスが自ら出陣して雷の太い矢を大地にはしっはしっと射ているような迫力

ポプラ並木と空の境目で、時々小さな稲妻が走った。

隣家の木立と屋根が、一瞬の稲妻に真昼のように浮かび上がる

雷が鳴り出した。大気をまっ二つに引き裂くような烈しい振動があり、赤い火箭（かせん）が竿を継ぎ足すように、ジグザグと鋭くっつ走った。

雷も雨も破れるような響きをしている。

間断なく電光がうねり、まるで爆撃機の絨毯爆撃のように凄まじい破裂音がとどろいた。

（雷光は無く音だけが聞こえる）雷が大きく空に鳴り響いた。窓ガラスが細かく震えた。しかしまだ雷光はない。雨音も聞こえない。天吾は昔見た潜水艦の映画を思い出した。爆雷が次々に爆発し、艦を激しく揺らせる。しかし人々は真っ暗な鋼鉄の箱の中に閉じこめられ、内側からは何も見えない。そこにあるのは絶え間のない音と振動だけだ。

威嚇するように次々と稲妻が閃く