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七尾は、自分の視界が狭くなるのが分かった。焦りのため、鼓動が早鐘を打ちはじめる。息が上がり、えもいわれぬ不安で胸が締め付けられる。頭を振った。どうする、どうする、と頭の中に囁き声が充満する。思考が、氾濫した水で押し流される。渦を巻き、思い浮かべた言葉や感情を、洗濯でもするかのようにごちゃまぜにする。七尾はその、焦燥感の洪水に身を任せた。激流が頭を搔き回す。もちろんほんのわずかな時間に過ぎず、たとえば、まばたきを数回するほどの間だったが、その奔流が止んだ途端、気持ちが切り替わった。頭の中の濁りが消え、思考や逡巡もなく、体が動く。先ほどとは打って変わり、視界が広くなる。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル ページ位置:51% 作品を確認(amazon)
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慌てる・焦る
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前後の文章を含んだ引用
......起をつまみ、壁のパネルを開けた。トランクを隠すことはできたが、人間が入るのは容易ではない。一目瞭然だ。 ここには隠れられない。では? どうする。どうするのだ。 七尾は、自分の視界が狭くなるのが分かった。焦りのため、鼓動が早鐘を打ちはじめる。息が上がり、えもいわれぬ不安で胸が締め付けられる。頭を振った。どうする、どうする、と頭の中に囁き声が充満する。思考が、氾濫した水で押し流される。渦を巻き、思い浮かべた言葉や感情を、洗濯でもするかのようにごちゃまぜにする。七尾はその、焦燥感の洪水に身を任せた。激流が頭を搔き回す。もちろんほんのわずかな時間に過ぎず、たとえば、まばたきを数回するほどの間だったが、その奔流が止んだ途端、気持ちが切り替わった。頭の中の濁りが消え、思考や逡巡もなく、体が動く。先ほどとは打って変わり、視界が広くなる。 後ろへ向かっていく七尾の前で、二号車の扉が開いた。威勢の良い溜め息とでもいうような、噴射音が響く。座席がすべて進行方向を、七尾の入ってきたほうを向いている。 ......
単語の意味
えも言われぬ(えもいわれぬ)
焦燥(しょうそう)
早鐘(はやがね)
奔流(ほんりゅう)
体(からだ)
胸(むね)
逡巡(しゅんじゅん)
えも言われぬ・・・言葉で言い表せない。言葉で言い表せないほど素晴らしい。
焦燥・・・苛立ち。焦り。イライラすること。
早鐘・・・激しく乱打される鐘。家火などの緊急事態を知らせるためのもの。また、激しい動悸のたとえ。
奔流・・・勢いのある流れ。激しく力づよい流れ。急流。奔湍(ほんたん)。
・・・頭・胴・手足など、肉体全体をまとめていう言葉。頭からつま先までの肉体の全部。身体。体躯。五体。健康。体力。
・・・1.体の前面で、首と腹との間の部分。また、その内側にある心臓や肺臓、胃などの内臓。
2.(胸に宿るとされている、)心。想い。心中。
3.乳房(ちぶさ)。おっぱい。
逡巡・・・1.決断がつかず迷うこと。優柔不断にためらうこと。しり込みすること。「逡」は訓読みで「ためら(う)」「しりぞ(く)」と読める。「巡」は訓読みで「めぐ(る)」と読め「一回りして元に戻る(=進むことなくためらう)」ことを意味する字。
2.数の単位のひとつ。模糊(もこ)の10分の1。1の100兆分の1。
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の焼けるような焦りを感じる。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
動揺と呼べるほどの波立つ思いが、悠木のに広がっていた。
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon
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