その花はまばゆく日に照らされてすーんとした香りが辺りにただよう

花はいくつもの黄色い細かい花弁をつけている

杏の花の香りが熟れる

青くさい草の香にむせる

鉄道草の香りから夏を越した秋がもう間近に来ているのだと思った

熟れ切った稲の 香 が強く鼻へ来る。

極上のアロマテラピー

におう、におう。

共同たんつぼのような悪臭

何らかの匂いを放つこともなく、潮風にとけて消えていった。

すずかけもすっかり芽ぶき、緑の美しい若葉が、火事の焔でゼラチンのように透けてみえた。

風が（葉の落ちた）ケヤキの枝のあいだを、鋭い音を立てて抜けていった。絶望を知った人の歯の隙間から出て行く酷薄な息のように。

田舎の通りには人がいなくて、自動車が通ることも稀で、ただ静かに草木を渡る風の音がした。

揺れは最高潮に達した。ドーンと重く山が鳴り、鳥が姿を見せないままけたたましく囀った。斜面の木が激しく梢を揺らし、杉の花粉が豪雪地帯もかくやとばかりにいっせいに降り注ぐ。 　ふ、腐海！ 　俺は思わず、ナウシカを連想した。「午後の胞子を飛ばしている……」ってやつだ。こんな幻想的な光景に、まさか現実でお目にかかれるとは思ってなかった。 　音が消えた。黄金色に輝く小さな粒が、視界を舞って地面に降り積む。

蕎麦（そば）の花が薄絹を曳き渡したように白く見える。