水紅を頬へ日の丸のようになすりつける。

良工が細工物でもするように楽しみながら元気よく朝化粧を終えた。

白く化粧した女

眉を描き、皮膚にクリームを塗り、唇に紅をひくと、若い別の女の顔が浮かび上がってくる

粉黛（ふんたい）の粧（よそお）い凝（こ）らした美女

色の白い細面のどこか寂しい顔立ち

如何にも元気のない風で夜のせいか顔色も青白く見えた。

横顔だけが、太陽の光を浴びる月のように青白く輝いて、 闇 に浮かび上がっていた。

おろしたての筆で描いたようにすらりとした椿の顎のライン

知的なところが全くない顔つき

唇は痩せており、明るいルージュで描かなければ形ができない

（地味な友人がハデな格好をしていたので一瞬気付かない）彼女が、目に映るその画像と、私の知っている、捜していた彼女の絵とのずれがシンクロした瞬間、妙な快感があった。 　私の目がとらえた、初めてのはずの見知らぬ人物。そこに知っている目鼻がものすごい速度の判断でぱちっとはまったのだ。 　間違いさがしの答えが見つかった瞬間みたいだった。

オーバーライン気味にリップが塗られていて、唇が桜の果実のように桜色にぽってりと膨らんでいる。

ガラスに押し付けた少し厚い唇は、ルージュの色を失って妙な形に崩れる

（薄暗い部屋）夕月にぬれた草の色は、灯をつけずにいた家の中へ、ちょうどよい加減な明るさをただよわせている。ほんのりと酔ったお稲の白粉が石楠花（しゃくなげ）の花みたいに、ぼっと浮いて。