（夜の電車内）向かい側の暗い窓ガラスに電車の内部がそっくりそのまま映っている。まるでもう一台のおぼろな電車が夜のなかを並走しているみたいだ。

貨物車の駆け抜ける音が、音楽のように響いた。

上野から信越線に乗ると、朝の窓の風景は、いつの間にか茫々とした秋の景色だった。あたりはすっかり秋になっている。窓を区切ってゆく、玉蜀黍（とうもろこし）の葉は、骨のようにすがれてしまっていた。

駅に到着し、新幹線がぐっと呼吸を止めるような間があり、その後で、ぷしゅうと扉が開いた。

いま神戸を出てきたばかりのつばめ（列車）は、その響きの明朗なる如くその姿も颯爽として、初陣の若武者といった感じ

下り線ホームは地中深くに掘られたトンネルの中にあって、陽光を目にするには四百八十六段の階段を上がらねばならない。

新幹線の巨大な駅。田舎の小さな単線駅。実用一筋の貨物集積駅。

入ってきた電車の騒音に負けまいと声を大きくする。

（電車が）勢い良く通っていく。　川の堰が切れて濁流が流れていくような、騒々しさだった。激流が、目前を通過していく。

ホームに入ってきた電車が、彼らとウサギを隔てた。

終電車はもうとうに終わっている。駅舎もホームも照明が落とされて暗い。駅周辺の商店も、住宅も、明かりの漏れている建物は少なく、林や畑はもとより夜の闇そのものみたいに真っ暗、というか真っ黒に映る。 　そのなかをまばらな街灯が繫いで示す道は細く頼りなく曲がりくねり、今は寝静まっているこの街の人々の住まいと住まいを結びながら闇に突っ込んだように途絶えたり、明るいオレンジ色の街灯とともに北側を太く力強く走る国道に届いたりした。 　その国道こそ時折トラックなどが走ってきて去っていき、動きの乏しいこの町の夜景が、時間の止まった静止画ではないことを気づかせてもくれるのだったが、南側の畑が広がる間の細い道路を移動する自動車の光があると、むしろ時間と空間を超え来た物体を夜空に見ているような錯覚に陥った。

遠くの空に飛行船が浮かんでいた。 　風を押して、ゆっくりと移動してゆく。《…略…》小さなライトを点滅させて、飛行船は、淡い月影のように空をゆくのだった。

視界の右端に映る身体が強烈な存在感をもち、彼女がステアリングを操作する度に彼の股間に力が入った。勃起はしていない。ただユナの腕の動きに合わせ、マリオネットのように先端が首をもたげるのだ。さっきまでかいていた汗はクーラーのおかげでひいていくが、彼の身体の奥はうだるように熱い。カーオーディオから流れる黒人歌手のシャウトが、ミラーに吊り下げられたスティッチの揺れ具合が爆発を促しているような気さえする。

スピードメーターのすぐ上のデジタル時計は八時二十三分を示している

零戦は雷撃機の群れに、猟犬のように襲いかかりました。

ものすごい強烈な脂肪燃焼をうたった痛いくらいのジャグジー

書架が林のように並び

（道頓堀川）すさまじい汚濁と喧噪と色とりどりの電飾板に包まれた巨大な泥溝

「カップルばかりだなあ、この店は。」

公園を抜けていくと、夜の緑の匂いでむせかえるようだった。