(何万匹もの薄羽かげろうの屍体の翅(はね)が水面で油のような光彩を流しているのを見て)墓場を発 いて屍体を嗜 む変質者のような残忍なよろこびを俺は味わった。
梶井基次郎 / 桜の樹の下には ページ位置:76% 作品を確認(青空文庫)
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喜ぶ・うれしい
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......のかさなりあった翅 が、光にちぢれて油のような光彩を流しているのだ。そこが、産卵を終わった彼らの墓場だったのだ。 俺はそれを見たとき、胸が衝 かれるような気がした。墓場を発 いて屍体を嗜 む変質者のような残忍なよろこびを俺は味わった。 この溪間ではなにも俺をよろこばすものはない。鶯 や四十雀 も、白い日光をさ青に煙らせている木の若芽も、ただそれだけでは、もうろうとした心象に過ぎない。俺には惨劇が......
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