心の奥底に葛籠を抱いていた。その中には自分を破滅させる穢れが詰まっていると思い込んでいた。長い歳月、怯えて生きてきた。必死で葛籠を隠し、蓋を押さえつけてきた。だが、いざ開いてみれば、中に詰まっていたのは哀しみだけだった。
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 ページ位置:40% 作品を確認(amazon)
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心の傷・トラウマ
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......が淫売であろうが何であろうが、もはや四十になった男の弱みにも瑕疵にもなりようがなかった。 悠木は次の原稿を手元に引き寄せた。赤ペンを入れる手は止まらなかった。 心の奥底に葛籠を抱いていた。その中には自分を破滅させる穢れが詰まっていると思い込んでいた。長い歳月、怯えて生きてきた。必死で葛籠を隠し、蓋を押さえつけてきた。だが、いざ開いてみれば、中に詰まっていたのは哀しみだけだった。戦後の混乱期に夫に蒸発され、乳飲み子に泣かれ、ずるい目をした男たちに縋り、そして、誰一人葬式に現れてもくれぬ生涯を過ごした憐れな女が横たわっていただけだった。 ......
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心の傷・トラウマの表現・描写・類語(記憶のカテゴリ)の一覧 ランダム5
その情景は、漁夫達の胸を、眼 のあたり見ていられない凄 さで、えぐり刻んだ。
小林多喜二 / 蟹工船
視界を失った。 疲れてる。そう思った時、ふっと暗い場所に心が引きずり込まれた。 納屋の中だった。小さな体の自分が見えた。震えながら一人、膝を抱えていた。
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon
幼心には処理しきれないほどのトラウマを背負う
綿矢 りさ / かわいそうだね?「かわいそうだね? (文春文庫)」に収録 amazon
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そのことについて僕は溶鉱炉のふたにも似た頑丈で確実な記憶を有している。
村上春樹 / ローマ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon
(記憶の混乱)どれが伝聞で、何が本当に自分の経験なのか、まったく区別がつかないんです。想像しただけの場面を、現実だと思い込んでいるんじゃないか。反対に、実際に目にしたはずのことを、錯覚と勘違いしているのかもしれないって
翔田 寛「真犯人 (小学館文庫)」に収録 amazon
思い出が、快い音楽のように魂の中で鳴りひびく
福永 武彦 / 草の花 amazon
不気味な電話のことを思い出す。粘りつくあの声は耳にこびりついている。
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
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