宝石のような思い出を記憶の中から拾い上げては悲しい気持になっていた。《…略…》それらの残像は 匙 からこぼれる粉砂糖のようにさらさらと形を変えた。

目を閉じて祖母の面影を追った。

記憶の天袋の戸が次々と開いていく。ぱたん、ぱたん、と開いては閉じる。そこから覗く過去の場面は、埃を被ってはいるものの、一定の生々しさを備えていて、子供の頃の体験とは思えないほどの臨場感があった。

昔のことを編むための美しい糸をたぐりよせるような遠い瞳

眉の間にしわを寄せ、真剣に記憶をたどる

（思い出すと）すると春風に吹かれたような心地がして何も腹の立つことがなくなり、自然に微笑が浮んでくるのであった。

昨日のことのようにはっきりと覚えている

記憶は破壊され、意識は混濁の中にある

三十三年も前なのに、まるで昨日の事のように思い出された。

記憶のデーターバンクにしまいこまれ、永遠に保存される。