古藤の目には怒りというよりも、ある激しい感情の涙が薄く宿っていた。

心持ち濡れたような目

目の白い部分に朝の光があたり、瞳を少年のように潤いのあるものに見せる

星空の下を歩いていたら、涙が後から後からあふれはじめた。道も足元も、静まり返った街並みも熱くゆがんで見えた。すぐに息がうっとつまってしまい、苦しかった。それで必死に冷たい風を吸い込んでみても、細くしか胸に入ってこないように感じた。瞳の奥にひそむとがったものが風にさらされて、どんどん冷えてゆく気がした。 　いつも普通に目に入ってくる電柱や街灯や止めてある車が、黒い空が、うまく見えなかった。すべてが熱気の向こうにあるようにシュールに美しくゆがんで光り、目の前にぐんとせまってくる。私は自分のエネルギーがものすごい勢いで全身から出ていってしまうのを止められない、と感じた。しゅうしゅう音を立てて、闇に消えてゆく。

目には涙が一杯溜まり、それが月の光をキラキラ反射する

彼女の上へ目を注ぎながら、彼女を通してそのもっと向こうにあるものを見つめているような眼つき

暗中に卒然として白刃を見る思いがする視線

みなそれぞれ貝殻の蓋のように、秀吉の視線から瞼を閉じてゆく。

眼の下の袋のようなたるみ

女が私の目を 覗き込んだ。《…略…》大きな瞳にまつげがびっしりとはえているのが見えた。深く、どこまでも遠く、子供のとき初めてプラネタリウムを見たときのあの丸い天井を思い出した。こんなに小さい空間に大宇宙を閉じ込めている。

泣きはらしたブスな顔

火のような涙が噴きこぼれてきた。

窓枠に肘をついて、こめかみに指先をじっと押しつけていた。彼女はまるで眠りこんでしまったみたいに静かに瞼を閉じていた。時々まつげが微かに上下に動き、唇が小さく震えるだけだった。たぶん体の中で泣いているんだろうと僕は思った。声も涙も出さずに泣いているのだ。

視界が水びたしになる。

滴るほどに潤った目