(見殺しにした良心の呵責)殺した、殺した、殺した、殺した……耳もとでだれかの声がリズムをとりながら繰りかえしている。(俺あ、なにもしない)勝呂はその声を懸命に消そうとする。(俺あ、なにもしない)だがこの説得も心の中で 撥ねかえり、小さな渦をまき、消えていった。
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 ページ位置:84% 作品を確認(amazon)
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罪悪感・後ろめたい・良心の呵責
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前後の文章を含んだ引用
......てよいのかわからない。何をしてよいのかもわからない。手術室の中にはまだおやじも助教授も浅井助手も、戸田も残っているけれども勝呂はそこへ戻ることはできなかった。 殺した、殺した、殺した、殺した……耳もとでだれかの声がリズムをとりながら繰りかえしている。勝呂はその声を懸命に消そうとする。だがこの説得も心の中で撥ねかえり、小さな渦をまき、消えていった。階段をおりる自分の靴音を聞きながら彼は二時間前、あの米兵がなにも知らず、ここをのぼってきたのだなと思った。と、勝呂の眼にあの途方に暮れたような表情をした米国人捕......
単語の意味
耳元・耳許(みみもと)
耳元・耳許・・・耳の根もと。耳のそば。耳のすぐ近く。耳許の「許」は、「近く」「そば」を意味する。
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針を呑むような呵責の哀しみ
嘉村 礒多 / 業苦 amazon
今、戸田のほしいものは呵責だった。胸の烈しい痛みだった。心を引き裂くような後悔の念だった。
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon
有島武郎 / 或る女
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心で感じる後悔の表現・描写・類語(悔やむのカテゴリ)の一覧 ランダム5
心の中には苦 い灰汁 のようなものがわき出て来る
有島武郎 / 生まれいずる悩み
徐々に心を巣食う罪悪感に苛まれるようになった。
雫井 脩介「火の粉 (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
(黒い憂鬱の浸食)ゼリー状の憂鬱とでも言うべき、暗澹たるものが胸の中に広がりはじめ、それが自分の頭をも占領するのをひしひしと感じた。 黒い感情が、蝉の内側に充満する。湿って粘着性のあるものにも感じられたが、乾燥して水分のまるでない干涸らびた思いにも感じられた。これは、と蝉は朦朧とする頭で考えていた。これは何だよ。 どろどろとした沼で喘ぐような気持ちで、頭を回転させる。馴染みのない憂鬱さに、戸惑い、怯えた。自分に対する失望や落胆、幻滅に似た、何かに襲われている。阻喪とも放心ともつかない。 しばらくして、まさか、と思い至った。ふいに、まさかこれは、俺の中の罪悪感が溢れかえっているんじゃねえだろうな、と気がついた。
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー amazon
「じゃ何か食べましょう、私の心がすまないから。」
林芙美子 / 新版 放浪記
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冷ややかな悔恨が泉のようにわき出した。
有島武郎 / 或る女
駐車場に停めた車に乗り込むと、エンジンをかける前にしばらく目をつぶる。後ろめたさの溶けた息をゆっくりと吐き出す。
重松 清「流星ワゴン (講談社文庫)」に収録 amazon
自分の人生が、未来の展望を欠いているが故に、こうも過去に拘泥してしまう
平野 啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」に収録 amazon
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