誰に歌うでもなく、無意識のうちにさせ子はハミングを続けた。それでも音はまるで目に見えるように空気を縫って、この世でいちばんいい香りのように立ち上って行った。美しい歌声だった。かすれて、甘く、正確で厳しく、でも震えを秘めていた。
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 ページ位置:90% 作品を確認(amazon)
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鼻歌
歌声・歌う
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前後の文章を含んだ引用
......空、海。ただ西日を眺め、恋人を横に置き、犬のようにこの美しい空気にしっぽを振っている。そういう気分。 祝福、 された時間だ。 夕日が沈むまで、ただ眺めていた。 誰に歌うでもなく、無意識のうちにさせ子はハミングを続けた。それでも音はまるで目に見えるように空気を縫って、この世でいちばんいい香りのように立ち上って行った。美しい歌声だった。かすれて、甘く、正確で厳しく、でも震えを秘めていた。 それが、私がさせ子の歌を聴いた初めのときだった。 11 サイパンの夜の明かりはダイヤモンドみたいだった。建物が少なくて、明かりが大きい。空気が澄ん......
単語の意味
厳めしい・厳しい(いかめしい)
厳めしい・厳しい・・・雰囲気が立派すぎて、威圧感さえ感じる。甘えや妥協など許されない感じで、近寄りにくい。
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鼻歌の表現・描写・類語(喜びのカテゴリ)の一覧 ランダム5
月明かりの下で歌いはじめた。 夜の気配の間をていねいにぬってゆく鼻歌みたいな調子だった。
吉本 ばなな「アムリタ(下) (新潮文庫)」に収録 amazon
となりのビーチバーから聴こえてきている曲にあわせて、かすかにハミングし始めた。
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 amazon
鼻の先で器用に唄って
林芙美子 / 新版 放浪記
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歌声・歌うの表現・描写・類語(声・口調のカテゴリ)の一覧 ランダム5
夜の歩道を取り囲む空気をぐるぐると掻き回す歌声
伊坂 幸太郎 / アイネクライネナハトムジーク amazon
唄 はどこか哀調をおびていた。
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 amazon
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「声・口調」カテゴリからランダム5
(「ああ、痛い」という声が)からだのありかとほとんどかかわりなく、闇の中にひろがりきって、闇そのものの呻きのようにふくらんでは引く。
古井 由吉 / 水「古井由吉自撰作品 2 水/櫛の火 (古井由吉自撰作品【全8巻】)」に収録 amazon
声に微かないたわりが匂う
黒井 千次 / 群棲 amazon
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