浅黒くてピンと緊張した肩や胸板

カブトムシみたいな肉体

筋肉が赤土のように盛り上がる

筋肉の鎧を着た

筋骨のたくましい赤銅色の体

シナ人がおじぎするときのように両手を袖（そで）へ入れて

いかにも弱ったという風に腕を組む

自分を落ちつかせようと腕を組んだ

いかにも弱ったという風に腕を組む

何やら考え込むように腕を組んだ。

やわらかな月の光に照らされた直子の体はまだ生まれおちて間のない新しい肉体のようにつややかで痛々しかった。彼女が少し体を動かすと――それはほんの僅かな動きなのに――月の光のあたる部分が微妙に移動し、体を染める影のかたちが変わった。丸く盛りあがった乳房や、小さな乳首や、へそのくぼみや、腰骨や陰毛のつくりだす粒子の粗い陰はまるで静かな湖面をうつろう水紋のようにそのかたちを変えていった。

まるで違う重力に支配されてるぐらいの、のっとりのっとりやって来た

矛木（ほこぎ）のように痩せて

繊細でなよなよした物腰

背のひょろ長い、体のわりに顔が小さい、いつも前かがみになって歩く男

腕は、親指と人差し指とにすっぽり入るほど痩せている

両腕でしっかり自分の胸を抱き込むようにしながら、じっと前方を見据えて動かない。

ダンスにでも誘うように腕を差し伸べる

両腕は舷側（げんそく）へ流した櫂（かい）のように、胸著（むなつき）の側面へ平行に伸した。

まるで柵でもあってそれ以上は近づけないというように、動かずに私へいっぱいに手をさしのべた。