まぶしいほど早かった船足が急によどんで、後ろに吸い寄せられて、艫 が薄気味悪く持ち上がって、船中に置かれた品物ががらがらと音をたてて前にのめり、人々も何かに取りついて腰のすわりを定めなおさなければならなくなった瞬間に、船はひとあおりあおって、物すごい不動から、奈落 の底までもとすさまじい勢いで波の背をすべり下った。同時に耳に余る大きな音を立てて、紆濤 は屏風倒 しに倒れかえる。わきかえるような泡 の混乱の中に船をもまれながら行く手を見ると、いったんこわれた波はすぐまた物すごい丘陵に立ちかえって、目の前の空を高くしきりながら、見る見る悪夢のように遠ざかって行く。
有島武郎 / 生まれいずる悩み ページ位置:41% 作品を確認(青空文庫)
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嵐の中の船
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前後の文章を含んだ引用
......ろのほうから、見上げるような大きな水の堆積 が、想像も及ばない早さでひた押しに押して来る。 「来たぞーっ」 緊張し切った五人の心はまたさらに恐ろしい緊張を加えた。まぶしいほど早かった船足が急によどんで、後ろに吸い寄せられて、艫 が薄気味悪く持ち上がって、船中に置かれた品物ががらがらと音をたてて前にのめり、人々も何かに取りついて腰のすわりを定めなおさなければならなくなった瞬間に、船はひとあおりあおって、物すごい不動から、奈落 の底までもとすさまじい勢いで波の背をすべり下った。同時に耳に余る大きな音を立てて、紆濤 は屏風倒 しに倒れかえる。わきかえるような泡 の混乱の中に船をもまれながら行く手を見ると、いったんこわれた波はすぐまた物すごい丘陵に立ちかえって、目の前の空を高くしきりながら、見る見る悪夢のように遠ざかって行く。 ほっと安堵 の息をつく隙 も与えず、後ろを見ればまた紆濤 だ。水の山だ。その時、 「あぶねえ」 「ぽきりっ」 というけたたましい声を同時に君は聞いた。そして同時に......
単語の意味
丘陵(きゅうりょう)
艫(とも・ろ)
背(せ)
腰(こし)
丘陵・・・なだらかな起伏が、帯状に続く地形。
艫・・・1.船の後方部分。船尾。とも。⇔ へさき・みよし。
2.船の前方部分。船首。
2.船の前方部分。船首。
腰・・・1.胴体の下の方の部分で、上体と下肢(かし)をつなぐ部分。座る姿勢をとったとき、骨盤あたりの折り曲がる部分を漠然という。ウエスト。
2.衣服やはかまの腰にあたる部分。
3.あらゆる物の、腰に相当する部分。中ほどより少し下の部分。
4.紙や布などの、しなやかで破れにくい性質。
5.餅(もち)や粉などの、粘りや弾力。
6.刀や袴など、腰につけるものを数えるときの単位。「刀ひと腰」「袴ひと腰」
7.何かをする際の姿勢や構え。「及び腰」「けんか腰」など。
2.衣服やはかまの腰にあたる部分。
3.あらゆる物の、腰に相当する部分。中ほどより少し下の部分。
4.紙や布などの、しなやかで破れにくい性質。
5.餅(もち)や粉などの、粘りや弾力。
6.刀や袴など、腰につけるものを数えるときの単位。「刀ひと腰」「袴ひと腰」
7.何かをする際の姿勢や構え。「及び腰」「けんか腰」など。
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嵐の中の船の表現・描写・類語(水面・水中・水辺のカテゴリ)の一覧 ランダム5
ドドドウと舷 を打つ重い濤音とともに、ギギギと船全体を軋ませ、ぐうっと右にロールした。
宮本百合子 / 伸子
時々波の背に乗ると、スクリュが空廻りをして、翼で水の表面をたたきつけた。
小林多喜二 / 蟹工船
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巨大な流木が奇怪な骸骨のように砂に寝そべって、濃い長い影を水の上に吹き流す
本庄 陸男 / 石狩川〈上〉 amazon
人生の帰り路にでも行きあたっているような荒涼とした夜の湖の景色であった。
林 芙美子 / 松葉牡丹「林芙美子全集〈第13巻〉晩菊・松葉牡丹 (1951年)」に収録 amazon
ヒューヒューと風の叫び、その風に波がしらを折られる
直哉, 志賀「暗夜行路 (新潮文庫)」に収録 amazon
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(マグロ漁船)80日間世界一周過酷労働の旅
428 ~封鎖された渋谷で~ amazon
舟の家のどこかはかない揺れ具合
宮本 輝 / 泥の河「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 amazon
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がやがやと騒ぐ聴衆のような雲や波の擾乱
有島武郎 / 生まれいずる悩み
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