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(恋をしていた時の気持ちを思い出す)はっと気づくと、突如頭がクリアーになっていた。ずーっと目の前を 覆っていた霧が晴れたような感じだった。なにが起こったのかわからなかったけれど、ああ、昔は世の中がこんなふうに見えていたのか、と私は思った。 昔? そう、彼に出会ったころ、私は人生のすべての味をかみしめるような気持ちでいつもいた。 デートの約束をした晴れた朝の切なさ。 2人でいられる短い時間の風の匂い、歩く速度すら速すぎて、流れていくようだった街並の角度。 ガラス、アスファルト、ポスト、ガードレール、自分の 爪。店のショーケース。 ビルの窓に光る 陽 の光。すべてを細胞に刻み込む勢い、何もかもに勝てる確信。 勝つために、忘れてしまわないために時の一粒一粒を 慈しみ、情報として体に取り込もうとする働き。 恋によってあふれたエネルギー、見開かれた 眼。 あのときそのままに美しかった。美しい。何もかもがよく見えて、はっきりしている。一つ一つのものが、香り立つようにその存在の輪郭を 際立たせる。 おなかのほうからわくわくした気持ちが 湧いてくるのが感じられた。目を閉じると目の前にマーブルのように 渦巻くエネルギーの流れが見えた。
吉本 ばなな / キムチの夢「とかげ (新潮文庫)」に収録 ページ位置:69% 作品を確認(amazon)
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前後の文章を含んだ引用
......った。少し疲れ気味かな、とは思うけれど、と。そのときだった。 その変化が自分のなかであまりにもはっきりしていたから、思わず時計を見てしまった。 10時15分。 はっと気づくと、突如頭がクリアーになっていた。ずーっと目の前を覆っていた霧が晴れたような感じだった。なにが起こったのかわからなかったけれど、ああ、昔は世の中がこんなふうに見えていたのか、と私は思った。 昔? そう、彼に出会ったころ、私は人生のすべての味をかみしめるような気持ちでいつもいた。 デートの約束をした晴れた朝の切なさ。 2人でいられる短い時間の風の匂い、歩く速度すら速すぎて、流れていくようだった街並の角度。 ガラス、アスファルト、ポスト、ガードレール、自分の爪。店のショーケース。 ビルの窓に光る陽の光。すべてを細胞に刻み込む勢い、何もかもに勝てる確信。 勝つために、忘れてしまわないために時の一粒一粒を慈しみ、情報として体に取り込もうとする働き。 恋によってあふれたエネルギー、見開かれた眼。 あのときそのままに美しかった。美しい。何もかもがよく見えて、はっきりしている。一つ一つのものが、香り立つようにその存在の輪郭を際立たせる。 おなかのほうからわくわくした気持ちが湧いてくるのが感じられた。目を閉じると目の前にマーブルのように渦巻くエネルギーの流れが見えた。 ほんとうに今、何が起こったんだろう? と思った。どうして突然あの感覚がよみがえったのだろう。 まさにその時、電話が鳴った。彼が取って、話しはじめた。 私はすっ......
単語の意味
慈しむ・愛しむ(いつくしむ)
渦巻く(うずまく)
体(からだ)
晴れ(はれ)
際立つ(きわだつ)
慈しむ・愛しむ・・・かわいがり大切にすること。自分より身分や立場が弱い人に対して、愛情を注ぐこと。
渦巻く・・・1.水や煙がグルグルと回って渦になる。ある感情が心の中に渦のようにグルグルと存在する。
2.気持ちや考えが次から次へと起こって、ごちゃごちゃになる。
2.気持ちや考えが次から次へと起こって、ごちゃごちゃになる。
体・・・頭・胴・手足など、肉体全体をまとめていう言葉。頭からつま先までの肉体の全部。身体。体躯。五体。健康。体力。
晴れ・・・1.天気がいいこと。雨や霧などが伴わない天気。空に雲が少ない、もしくはまったく無い状態。
2.多くの人から注目されて、光栄に思うこと。待ちに待った、めったにない機会であること。晴れがましいこと。正式なこと。公式なこと。
3.疑いが解けて、自由になること。「晴れて自由の身になる」
2.多くの人から注目されて、光栄に思うこと。待ちに待った、めったにない機会であること。晴れがましいこと。正式なこと。公式なこと。
3.疑いが解けて、自由になること。「晴れて自由の身になる」
際立つ・・・ひと際(きわ)(=一段と)目立つ。他との違いが明瞭である。周囲のものとはっきり区別されて、人目を引く。
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夏目漱石 / 吾輩は猫である
恋って発狂することだもん。《…略…》伊吹の「好き」は私と全然違う。私みたいに発情した身体を持て余してもいなければ、狂った独占欲が破裂するわけでもない。
村田 沙耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」に収録 amazon
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心をこめて車の整備をするように、体も治せる
吉本 ばなな / とかげ「とかげ (新潮文庫)」に収録 amazon
ゴルフのつかれが吸いとられるように消えていく。
丹羽 文雄 / 顔 (1963年) amazon
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順子さんの華やかな笑い声
林芙美子 / 新版 放浪記
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シンイチは大きく溜息をついた。額の冷汗は、氷を入れたグラスの外側の水滴のように、急速に玉になった。ああ、神様。彼は呟いた。安堵している。
山田詠美「新装版 ハーレムワールド (講談社文庫)」に収録 amazon
背筋が、ばねが入ったようにまっすぐ伸びる
谷村 志穂 / ハウス amazon
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疲労は重く全身に広がっている
阿刀田 高 / 恋は思案の外「ナポレオン狂 (講談社文庫)」に収録 amazon
「恋愛」カテゴリからランダム5
俺と女の体臭で醱酵させたあの部屋の無気力な温もり
松本 清張 / 真贋の森「松本清張ジャンル別作品集(3) 美術ミステリ (双葉文庫)」に収録 amazon
ねえ。うーん、だって結婚って、相手のいいところも悪いところも飲みこんでいくんでしょ? もし悪いところのほうが多かったら、お互いタマッたもんじゃありませんよ。 《…略…》そうだ、おねえさん、蛇ボールの話、知ってます? 《…略…》二匹の蛇がね、相手のしっぽをお互い、共食いしていくんです。どんどんどんどん、同じだけ食べていって、最後、頭と頭だけのボールみたいになって、そのあと、どっちも食べられてきれいにいなくなるんです。分かります? なんか結婚って、私の中でああいうイメージなのかもしれない。今の自分も、相手も、気付いた時にはいなくなってるっていうか。うーん、でも、それもやっぱ、違うのかなあ。違う感じもするなあ。
本谷 有希子 / 異類婚姻譚 amazon
顔の上に烈しい接吻が乱れ落ちた。
夢野久作 / あやかしの鼓
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