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いま、このうちは、便所のなかから、台所の上げ蓋の下まで、香の匂いがする。
向田邦子 / ダウト「思い出トランプ(新潮文庫)」に収録 ページ位置:62% 作品を確認(amazon)
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葬儀・通夜
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前後の文章を含んだ引用
......広が、細かい鱗の織り出し模様になっているのも、腹が立ってきた。 塩沢のそばににじり寄って、悔みを言いかけた。塩沢は目を閉じ、香華の匂いを鼻いっぱいに吸い込んだ。いま、このうちは、便所のなかから、台所の上げ蓋の下まで、香の匂いがする。 玄関にざわめきが起った。「鯨岡常務の奥さんがみえた」 シッとさえぎる小さな声が、「モト、モト」「鯨岡さんでいいんだよ」 と囁き合っている。 半年ほど前に死んだ......
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香(こう)
・・・かいでいい匂いがするもの。いい匂いがする物質(香料)を練り固めたもの。火をつけて煙を立ちのぼらせて、香りをたたせるもの。ねり香。お香。
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