ガラス玉のような大きな瞳

黒瞳の勝った大きい目が客に印象を与えた。

眼が鈴のように丸くって大きく、常にくるくる動めいている

その眼が小さくくぼんでいるにかかわらず、ぱっちり開いているようにみえるのは、 睫毛 が人形などにあるように、はっきりと外にひろがっているからだった。

（印象的な目）目が開いていると、余りにも目の印象が強すぎて、正視できないのかもしれない。それともその瞳の色や光こそが、彼女のすべてなのかもしれない。

その目は雪見に向けられていた。 　雪見は絡まった自分の視線を慌てて彼から外した。しかし、心の内を読まれるには十分過ぎる時間を与えてしまった気がした。

その問いかけるような、それでいて、既に彼を十分に理解しているようなふしぎな 眼差し

ピアノをやめることを惜しいとは思わなかったの？　あと一歩というところまで行ったのに」 　ミュウはその答えを逆に求めるように、すみれの目をじっとのぞき込んだ。深くまっすぐな視線だった。その一対の瞳の底では、急流の中のよどみのように、いくつかの無言の流れがせめぎあっていた。それらの流れが巻き起こしたものが、本来の場所に落ちつくのにいくらか時間がかかった。 「余計なことをきいてごめんなさい」とすみれは謝った。 「それはいいのよ。ただわたしにもまだうまく話せないだけ」

母は少しほほえんで私を見た。 　そのでっかい目で、あまりにも普通に、まっすぐに見るので、あまりにあけすけな視線だから、これにさらされると心を閉じているほうがむつかしくなる。《…略…》きっと私も時々こういうぶしつけな視線で人を見据えることがあるのだろう。そして人をむりやり解放したり正直にしたりしているのかもしれない。それはもしかしたら他人にとまどいと愛情の入り混じった変な 懐かしさを喚起させるのかもしれない。

（別れ際）戸口のところで水島は振り返る。十和子の姿を目のなかに刻みつけようとするかのように、あるいはむしろ自分自身の姿を、二度と消えない刻印として十和子の目に残そうとするように、一秒か二秒の間動かない。それから十和子のすわっている場所からは後ろ姿が見えなくなって、玄関のドアが静かに閉まる音が届く。

空気銃で撃たれた小鳥のように眼を丸くする

「ありがたいねえ」と目を細めて喜ぶ

蜆（しじみ）貝のような目の縁に涙をためる

脳心にたぐり込まれるような痛みを感ずる両眼

電燈の光に明るく透けてルビーのように光る目

手を握ったまま、ミュウはすみれをじっと見ていた。ミュウの真っ黒な瞳の奥に映っている自分自身の鮮やかな姿を、すみれは目にすることができた。それは鏡の向こう側に吸い込まれていった自分の魂のようにも見えた。

私の目をまたのぞき込んだ。ぞくっとした。古井戸の底の暗い水面みたいな深さだった。

具合悪げに下を向く

子供がすねたみたいに横を向く

幽霊よりも影のうすい姿を現わした。