色があせるのを待つばかりの満開の花

田圃に紫雲英（れんげそう）の花が毛氈（もうせん）のように咲き敷き

花壇には薄紫色のチューリップが咲いていた。見るたびに違う色のチューリップが、一列ずつ順番に咲いているのだった。

微風が起こって、まるで人垣の向こうの里枝たちを背伸びして見ようとしているかのように、棒立ちの花々が右に左にと身を揺らした。

（バラ園）薔薇以外の植物を探すのが困難なほど、いっさいが薔薇で埋め尽くされている。「カクテル」「パレード」「マリア・カラス」など品種は様々。鉢植えのものもあれば花壇に茂るもの、壁や支柱に絡みながら伸びるものなど、形もいろいろだ。しかも五月下旬のこの季節は薔薇の開花の時季。いままさに咲き誇らんとする色とりどりの薔薇がそこら中に溢れて、あたりは濃厚な香りと色彩に満たされている。それは息苦しささえ感じるほどの光景である。

（貧乏街）ただ燻（くす）ぼれて、口をいびつに結んで黙りこくってしまったような小さい暗い家が並んでいた。

普段歩き慣れている道で、ふと耳を澄ますと町が実にさまざまな音で溢れていることに気づく

鬱蒼たる森

（原っぱの）むらさき色のカーペットは、マツムシソウの花がさいているのであった。

冷たく硬い風が激しくふきあげてくる谷の高い崖