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げじげじ眉で、唇の厚いその顔は、私は何故なぜか見覚えがあるようであったが、考え出せなかった。
林芙美子 / 新版 放浪記 ページ位置:24% 作品を確認(青空文庫)
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忘れる・思い出せない・曖昧な記憶
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......が座敷へ上って来ると、妙に胃が悪くなりそうで、私は真正面から眉をひそめてしまった。 「あんたいくつ?」 「僕ですか、二十二です。」 「ホウ……じゃ私の方が上だわ。」  げじげじ眉で、唇の厚いその顔は、私は何故なぜか見覚えがあるようであったが、考え出せなかった。ふと、私は明るくなって、口笛でも吹きたくなった。  月のいい夜だ、星が高く光っている。 「そこまでおくってゆきましょうか……」  この男は妙によゆうのある風景だ。入れ......
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蚰蜒眉(げじげじまゆ)
蚰蜒眉・・・虫のゲジゲジの形に似た、濃くて太い眉。
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(思い出の本をきっかけに失われた記憶がよみがえる)母は、前の夫と別れてそれが秋ごろで、飲んで泣いて純子さんを困らせて、その後純子さんがうちに 居候 するようになって……。  言葉にするとそういう感じの、でもそれはこんなふうにあらすじでおえるようなものでなく、もっとたくさんの、言葉ではなくてある種の情報の洪水だった。あるデーターを封じていたのに、何かの手違いでまとめて呼び出してしまったような塊が、まとめてどかんと入ってきた。  私は動揺した。なんでこんなきっかけでこんなことになってしまうのだろう?  それらはどんどん流れを作り、筋道にそってあっという間に並べかえられてひとつの物語を作ろうとしていた。その処理は勝手にどんどん行われ、私はただ見ているしかなかった。それが何を創るのか。  私、という物語、自分史、といわれているもののもっと高度で、もっと 完璧 なもの。完成されていて丸くて立体で、私の情の入る 隙間 もないほど厳密なもの。  大きな渦巻き、まわりじゅうの人々や、出来事を海みたいに取り込んで、満ちて引いて私独自の色に染め抜かれた世界に一つしかない、あるいは皆と共通の一つのシルエットを 創る流れのらせんを感じた。  アンドロメダみたいによく知っていて、きれいで遠い姿をしていた。  そして、本から目をあげると。  ありとあらゆるものが、歴史をたたえてそこに存在していた。  さっきまでとは、世界が違ってみえた。  私の記憶の欠けていた所が戻ってきたということなのだろうか。  私は声に出してそう言ってみたけれど、何よりもさっきまでそういうのが思いだせない、混乱していた部分を自分が持っていたというのがもう感覚としてわからなかった。  ただ、何一つ変わっていないように見える部屋のものが、突然ひとつひとつ別のデーターを表現しているように感じられた。
吉本 ばなな「アムリタ(下) (新潮文庫)」に収録 amazon
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