真赤な火柱が竜のように立ち昇りました。

燃え盛る真っ赤な炎

（芝居小屋のインド人は）口から盛んに火を吹いていた。それには怪しげな美しささえ見えた。

火柱のような赤い炎

太い火柱の影が、月の空へ突きとおって見えた。

薄青い炎が舐めるように紙の上を這う

エンジンを点火させた。マフラーの先端に五円玉ほどの大きさの穴が空いていて、そこから一〜二秒間、灰色の煙が上がる。煙と雨の組み合わさった匂いは、化学的な毒々しさを秘めていた。湿っていたものが急に焼かれ、やがて水分を寄せ付けぬほどにまで熱くなる。

灰と化した紙片は《…略…》ちぎれた黒蝶の羽のように舞い上った。

（紙くずを燃やす）紙はよじれながらオレンジ色の炎に包まれる。

（蝶の標本を燃やす）蝶を箱から出して、庭で火をつけた。メラメラと紙のように焼けていく羽から銀色の粉が飛び散った。それは風にとばされて消えてしまった。

窓から入り込んでくるゆるい風が煙草の煙をどこかに運んでいった。

巨大な鞴（ふいごう）を吹くような、噴火口の唸りだけが聴える。音は強くも弱くもならず、のそのそしていると、ハタとその唸りが止んで、山じゅう爆発でもしそうな恐怖を伸子に与えた。

羊の毛のように白く靡（なび）く浅間の烟（けむり）

煙草のけむりが 眩まば ゆい天井に固まってたゆとうている。

室内には煙が充満していて、四本の煙草の先や灰皿から白い煙が上り、天井のあたりにとどまってはやがて見えなくなる。