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(舌にできた発疹)十和子を驚かせたのは、赤いグロテスクな発疹がいつの間にか増殖して舌の表面を覆っていることだ。びっしりと寄り集まった舌先を中心に、ずっと奥の付け根の方まで、裏側のグチャグチャしたひだの間まで、よく見ると粒々が飛び火している。これから病変がひろがっていきそうな部分は、 舌苔 が薄くなって地肌が透けている。これが自分の舌だとは信じられない。  自分の舌が以前はどんな状態だったか思い出せない。でも、こんなに赤い、ひとつひとつがこんなに大きい粒々などなかった。こんなに不気味な、腐った魚の卵みたいな肉塊ではなかった。《…略…》病んだハラワタみたいなこの舌が、ある種の 烙印 のように思える。何か口では言えないほどいけないことをした女の烙印。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 ページ位置:21% 作品を確認(amazon)
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前後の文章を含んだ引用
......あげる。「どないした! またか、また噛んだんか!」 指で舌を引っぱり出して洗面所の鏡に映すと、側面の紫がかった柔らかい粘膜に傷穴が開いている。しかし、それよりも十和子を驚かせたのは、赤いグロテスクな発疹がいつの間にか増殖して舌の表面を覆っていることだ。びっしりと寄り集まった舌先を中心に、ずっと奥の付け根の方まで、裏側のグチャグチャしたひだの間まで、よく見ると粒々が飛び火している。これから病変がひろがっていきそうな部分は、舌苔が薄くなって地肌が透けている。これが自分の舌だとは信じられない。 自分の舌が以前はどんな状態だったか思い出せない。でも、こんなに赤い、ひとつひとつがこんなに大きい粒々などなかった。こんなに不気味な、腐った魚の卵みたいな肉塊ではなかった。舌癌か? それとも何かの内臓疾患の顕れか?「十和子、大丈夫か? 俺が見たろか」 いくら陣治でも、こんなものを見せるわけにはいかない。冷や汗が滲むほどの羞恥がこみ上げてくる。病んだハラワタみたいなこの舌が、ある種の烙印のように思える。何か口では言えないほどいけないことをした女の烙印。「どうや、血ぃとまったんか」 様子を見にこられては困るので、努めて平静な声で、たいしたことはない、と返事をする。何度もうがいを繰り返してから、何倍にも腫れ上がっ......
単語の意味
肉塊(にくかい・にっかい)
発疹(はっしん・ほっしん)
舌先(したさき)
肉塊・・・肉のかたまり。
発疹・・・皮膚病により皮膚が変化を起こしている状態。主に、皮膚に小さな吹き出物が出ることを指す。「はっしん」とも「ほっしん」とも読む。
舌先・・・1.舌の先。舌の先端。
2.上辺(うわべ)ばかりの物言い。口先。弁舌(べんぜつ)。「舌」は、「口でしゃべること」を意味する。
3.馬具の鐙(あぶみ)の、踵(かかと)の当たるほうの端。
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ただの醜い肉片
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
黙り込んで、口のなかで自分の舌を飴玉のように転がしている。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
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ニキビ・吹き出物・いぼの表現・描写・類語(肌の状態のカテゴリ)の一覧 ランダム5
前額部に角のような こぶ が出ている
昇平, 大岡「野火(のび) (新潮文庫)」に収録 amazon
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コーヒーをこぼしたような淡い色あいのしみ
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon
汗が衣服と背中との間を流れ
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 amazon
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