私はゴロッと仰向きに寝転んで、猫を顔の上へあげて来る。二本の前足を掴んで来て、柔らかいその蹠 を、一つずつ私の眼蓋 にあてがう。快い猫の重量。温かいその蹠。私の疲れた眼球には、しみじみとした、この世のものでない休息が伝わって来る。
梶井基次郎 / 愛撫 ページ位置:95% 作品を確認(青空文庫)
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猫
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前後の文章を含んだ引用
......道具! 私は猫の前足を引っ張って来て、いつも独り笑いをしながら、その毛並を撫でてやる。彼が顔を洗う前足の横側には、毛脚の短い絨氈 のような毛が密生していて、なるほど人間の化粧道具にもなりそうなのである。しかし私にはそれが何の役に立とう? 私はゴロッと仰向きに寝転んで、猫を顔の上へあげて来る。二本の前足を掴んで来て、柔らかいその蹠 を、一つずつ私の眼蓋 にあてがう。快い猫の重量。温かいその蹠。私の疲れた眼球には、しみじみとした、この世のものでない休息が伝わって来る。 仔 猫よ! 後生だから、しばらく踏み外 さないでいろよ。お前はすぐ爪を立てるのだから。
単語の意味
眼球(がんきゅう)
猫(ねこ)
眼球・・・目玉(めだま)。
猫・・・1.ネコ科の哺乳動物の総称。形は虎に似て、柔軟な体や出入り自由な爪、鋭い感覚のひげを足を持つ。暖かいところを好み、鼠(ねずみ)をよく捕るとされる。
2.(猫の皮を胴張りに用いるところから)三味線の異称。
3.猫車(ねこぐるま)の略。
4.猫火鉢(ねこひばち)の略。
5.ふいごの内側についていて、空気の出る孔をふさぐ革。
2.(猫の皮を胴張りに用いるところから)三味線の異称。
3.猫車(ねこぐるま)の略。
4.猫火鉢(ねこひばち)の略。
5.ふいごの内側についていて、空気の出る孔をふさぐ革。
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猫の表現・描写・類語(地上の動物のカテゴリ)の一覧 ランダム5
猫は宇宙を呪うような陰気な唸り声
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
夏目漱石 / 吾輩は猫である
喉をならし眼をつむり美女のように濡れた小鼻をふるわせて啼いている
大江 健三郎 / セヴンティーン「性的人間 (新潮文庫)」に収録 amazon
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錆びた黒い水に蠑螈(いもり)が赤い腹を見せている
田山 花袋 / 田舎教師 amazon
二、三メートルほどの縄がまるで蛇かなにかみたいに体をうねらせて彼女の跡を追って来た
阿刀田 高 / 縄 ──編集者への手紙──「ナポレオン狂 (講談社文庫)」に収録 amazon
(象の鼻は)さなだ虫のように巻いたりほぐれたりする。
鼻の頭も動物学教科書のさなだ虫の頭に似ている。
川端 康成 / 春景色「伊豆の踊子・温泉宿 他四篇 (岩波文庫)」に収録 amazon
(鼠は)数えきれないほどたくさん集まり、甲高い声で小学校のようにさわぎつつ食事をしていた。
開高 健 / パニック「パニック・裸の王様 (新潮文庫)」に収録 amazon
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