曇っているせいか、昼間だというのに南側のマンションの窓の幾つかに灯りが点っている。

濁った雲のなかに白い太陽が光り

空がすっかり白い雲でふさがり太陽も大きな銀の盤のやうにくもって光ってゐた

曇り空に雲が暗澹と動く

ササササと日が翳（かげ）る。風景の顔色が見る見る変わってゆく。

遠ざかる人が木漏れ日の中に溶けた

抜けるような青空のもと

ぼんやりとした花曇りの白い空

畳に差し込んでいる街灯が、古い畳の上で点滅する蛍光灯と混じっている。

その年の春は曇りの日が多かった。毎日空が冷たいすりガラスに包まれたようだった。公園のシーソーも駅前広場の花時計もガレージの自転車も、くすんだ光に閉じ込められていた。いつまでたっても街が冬の名残りから抜け出せないでいた。