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(薬が効く)おれは、歯を喰いしばって詰所を後にし、病室のベッドにもぐり込んだ。怒りが血流の中を異常な早さで巡回していた。このままこの病院を逃げ出してやろうか、という考えが一瞬浮かんだ。 数十秒後に、血流の中のアドレナリンを追いかけるように、ジアゼパム(さっき投薬した抗不安剤)が流入し始めた。それは、とろりとしたチーズのように、ささくれだった脳細胞にからみつき、荒廃した体中の荒れ地をやさしくほじくり返しはじめた。やがて、氷結して節くれだっていた全身が溶けてほぐれ始め、綿のごとく疲れた肉体だけがベッドの上をたゆたっていた。全身が柔毛のマユに包まれる感覚があって、やがておれはとろとろとした眠りの海を漂い始めた。
中島 らも / 今夜、すベてのバーで 作品を確認(amazon)
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薬
気持ちや痛みが消える、薄れる
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単語の意味
節榑立つ(ふしくれだつ)
節榑る(ふしくれる)
揺蕩う・猶予う(たゆたう)
荒廃(こうはい)
肉体(にくたい)
節榑立つ・・・1.節(継ぎ目の部分の膨らみ)が多くてデコボコしている。
2.手や指などが関節や筋がゴツゴツしている。
2.手や指などが関節や筋がゴツゴツしている。
揺蕩う・猶予う・・・1.ゆらゆらと漂っている。止まらずにずっと揺れ動いている。
2.心があれこれと迷う。気持ちを決めかねる。
2.心があれこれと迷う。気持ちを決めかねる。
荒廃・・・役に立たないほどボロボロな状態にあること。
肉体・・・肉から構成されている体。生きている人間の体。生身の体。
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(殺鼠剤入りのカプセルを飲む)喉のどこかにいやな異物感がある。カプセルが途中で引っかかって、なかの殺鼠剤が溶け出しているような、食道の内側の組織が焼け爛れていくような感触だ。涙まじりの唾液を何度も飲む。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
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氷水で絞ったタオルが両目の上に置かれると、力んでいた身体が緩むほど痛みが和らぐ。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
女を恨む気持ちは小さくなっていた。
阿刀田 高 / 捩れた夜「ナポレオン狂 (講談社文庫)」に収録 amazon
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苦痛が刺のように残っていた。
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じきに世界が終わるんじゃないかというような痛みだ。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
生命をひっぱたかれるような痛み
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原稿は烏のようなものだ、放せば立つ
室生 犀星 / 杏っ子 amazon
うねって来る色テープの浪。繽紛 と散る雪紙の中で、
岡本かの子 / 母子叙情
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