レタスと、うす切りの玉ねぎをドレッシングでよくまぜ合せたサラダ

彼はフォークにトマトと貝割れ大根を突き刺した。赤い蝶々の触角のように、貝割れ大根が頼りなげに揺れた。

レタスがどうしてもたべられなかった。水っぽくて味がなくて、レタスを食べていると自分が兎にでもなったような味気なさを感じた。

トマトだけのサラダ

サラダは身体を冷やす

レンコンのシャキシャキ、サクサクの快感はたとえようがない。（中略）歯が喜んでいる。

ぽりぽりというとても気持ちのいい音が部屋中に響き渡る

シャリシャリポリポリ、音が出るだけの歯ざわり

シンプルで、新鮮で、生命の香りがする

（丸かじり）トマトも丸かじりのほうが断然おいしい。トマトがおいしくなくなった、と、よくいわれるが、丸かじりするとどういうわけか不思議に昔のトマトの味になる。 　よく冷えたトマトに、なるべく大きくかぶりつく。かぶりついたら唇の全域をトマトに密着させる。シルの落下を防ぐためと、トマトのシルを一滴も残さず吸い取ろうという魂胆である。 　そうしておいて歯のほうはトマトの嚙み取り作業に専念させる。 　トマトの表面を唇でなぞるようにして少しずつ閉じていってトマトから離す。口の中のトマトのジュースと、不定形の果肉といっしょに嚙みつぶす。昔の、あの懐かしい、少し青くさくて日なたくさく酸っぱい味がするはずだ。