プカリプカリと、ウルトラマリンや、ガムボージ色の煙を吐き出す。……そうするとその煙が、朝雲、夕雲の棚引 くように、ユラリユラリと高く高く天井を眼がけて渦巻き昇って、やがて一定の高さまで来ると、水面に浮く油のようにユルリユルリと散り拡がって、霊あるものの如く結ぼれつ解けつ、悲しそうに、又は嬉しそうに、とりどり様々の非幾何学的な曲線を描きあらわしつつ薄れ薄れて消えて行く。それを大きな廻転椅子の中からボンヤリと見上げている、小さな骸骨みたような吾輩の姿は、さながらにアラビアンナイトに出て来る魔法使いをそのままだろう
夢野久作 / ドグラ・マグラ ページ位置:67% 作品を確認(青空文庫)
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タバコ
けむり
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前後の文章を含んだ引用
......…ああ愉快だ。こうやって自殺の前夜に、宇宙万有をオヒャラかした気持ちで遺言書を書いて行く。書きくたびれるとスリッパのまま、廻転椅子の上に座り込んで、膝を抱えながらプカリプカリと、ウルトラマリンや、ガムボージ色の煙を吐き出す。……そうするとその煙が、朝雲、夕雲の棚引 くように、ユラリユラリと高く高く天井を眼がけて渦巻き昇って、やがて一定の高さまで来ると、水面に浮く油のようにユルリユルリと散り拡がって、霊あるものの如く結ぼれつ解けつ、悲しそうに、又は嬉しそうに、とりどり様々の非幾何学的な曲線を描きあらわしつつ薄れ薄れて消えて行く。それを大きな廻転椅子の中からボンヤリと見上げている、小さな骸骨みたような吾輩の姿は、さながらにアラビアンナイトに出て来る魔法使いをそのままだろう…………ああ睡 い。ウイスキーが利いたそうな。ムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャ……窓の外は星だらけだ。……エ――ト……何だったけな……ウンウン。星......
単語の意味
夕雲(ゆうぐも)
渦巻く(うずまく)
姿・形・容・態・躰・體・軆・骵(すがた)
夕雲・・・夕方の雲。
渦巻く・・・1.水や煙がグルグルと回って渦になる。ある感情が心の中に渦のようにグルグルと存在する。
2.気持ちや考えが次から次へと起こって、ごちゃごちゃになる。
2.気持ちや考えが次から次へと起こって、ごちゃごちゃになる。
姿・形・容・態・躰・體・軆・骵・・・1.身体の形。からだつき。人のからだの格好。衣服をつけた外見のようす。
2.身なり。容姿。
3.目に見える、人の形。人の存在。
4.物の、それ自体の形。物一つ一つの全体的な印象。
5.物事のありさまや状態。事の内容を示す様相。
以下の文字は訓読みで、「すがた」と読める。
[形・容・態・躰・軆・體・骵]
2.身なり。容姿。
3.目に見える、人の形。人の存在。
4.物の、それ自体の形。物一つ一つの全体的な印象。
5.物事のありさまや状態。事の内容を示す様相。
以下の文字は訓読みで、「すがた」と読める。
[形・容・態・躰・軆・體・骵]
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火をつけると、この煙草特有の紙臭い臭いがたちこめ、それが炭火の臭気とまざって勝呂の胸をムカムカとさせた。
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon
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(骨董品店の)ショーウィンドウの中には 翡翠 色 の水差しがたったひとつ陳列してあった。淡い色彩の、いまにもぽきっと折れてしまいそうな長い長い 鶴首 から、ふっくら膨らんだ丸い胴への曲線が美しかった。
(戸棚は)高さ一間を横に仕切って上下共各 二枚の袋戸をはめたものである。
夏目漱石 / 吾輩は猫である
ニセ物(作り話)が本物より人の心を魅きつけるっていうのが小説の世界なんだ。
林 真理子 / エンジェルのペン「最終便に間に合えば (文春文庫)」に収録 amazon
東京の友達がみんな懐しがってくれるような手紙をいっぱい書こう。
林芙美子 / 新版 放浪記
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炊煙だか、蚊遣 り火 だかがうっすらと水のように澄みわたった空に消えて行く。
有島武郎 / 或る女
飛び立つ鳥が羽ばたくように、河面の雪が消えるように、煙がざわめく
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
焼け跡から吹きつけてくるザラザラした異様な風は、まるで不快な固物の撫で回すような感触を持っていた。
井上 友一郎 / ハイネの月「日本の文学 64 井上友一郎」に収録 amazon
火事がホンの狂言のようにすぐ鎮まる
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
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