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(白いソフトボールのような死)「そういうのをメスで切り開いてみたいって気がするのよ。死体をじゃないわよ。その死のかたまりみたいなものをよ。そういうものがどこかにあるんじゃないかって気がするのね。ソフトボールみたいに鈍くって、やわらかくて、神経が 麻痺 してるの。それを死んだ人の中からとりだして、切り開いてみたいの。いつもそう思うのよ。中がどうなってるんだろうってね。ちょうど歯みがきのペーストがチューブの中で固まるみたいに、中で何かがコチコチになってるんじゃないかしら? そう思わない? いや、いいのよ、返事しないで。まわりがぐにゃぐにゃとしていて、それが内部に向うほどだんだん硬くなっていくの。だから私はまず外の皮を切り開いて、中のぐにゃぐにゃしたものをとりだし、メスと ヘら のようなものを使ってそのぐにゃぐにゃをとりわけていくの。そうすると中の方でだんだんそのぐにゃぐにゃが硬くなっていってね、小さな芯みたいになってるの。ボールベアリングのボールみたいに小さくて、すごく硬いのよ。そんな気しない?」
村上春樹 / ねじまき鳥と火曜日の女たち「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 ページ位置:83% 作品を確認(amazon)
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人体解剖(死体を切り裂く)
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前後の文章を含んだ引用
......問されたくないの。それから目も開けないでね。わかった?」 僕は彼女の声と同じくらい小さく肯いた。 彼女は僕の唇から指を離し、その指を今度は僕の手首の上に置いた。「そういうのをメスで切り開いてみたいって気がするのよ。死体をじゃないわよ。その死のかたまりみたいなものをよ。そういうものがどこかにあるんじゃないかって気がするのね。ソフトボールみたいに鈍くって、やわらかくて、神経が麻痺してるの。それを死んだ人の中からとりだして、切り開いてみたいの。いつもそう思うのよ。中がどうなってるんだろうってね。ちょうど歯みがきのペーストがチューブの中で固まるみたいに、中で何かがコチコチになってるんじゃないかしら? そう思わない? いや、いいのよ、返事しないで。まわりがぐにゃぐにゃとしていて、それが内部に向うほどだんだん硬くなっていくの。だから私はまず外の皮を切り開いて、中のぐにゃぐにゃしたものをとりだし、メスとヘらのようなものを使ってそのぐにゃぐにゃをとりわけていくの。そうすると中の方でだんだんそのぐにゃぐにゃが硬くなっていってね、小さな芯みたいになってるの。ボールベアリングのボールみたいに小さくて、すごく硬いのよ。そんな気しない?」 娘は二、三度小さな咳をした。「最近いつもそのこと考えるのよ。きっと毎日暇なせいね。本当にそう思うわ。暇だと考えがどんどんどんどん遠くまで行っちゃうのよ。考えが......
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人体解剖(死体を切り裂く)の表現・描写・類語(骨・内臓のカテゴリ)の一覧 ランダム5
(白いソフトボールのような死)「そういうのをメスで切り開いてみたいって気がするのよ。死体をじゃないわよ。その死のかたまりみたいなものをよ。そういうものがどこかにあるんじゃないかって気がするのね。ソフトボールみたいに鈍くって、やわらかくて、神経が 麻痺 してるの。それを死んだ人の中からとりだして、切り開いてみたいの。いつもそう思うのよ。中がどうなってるんだろうってね。ちょうど歯みがきのペーストがチューブの中で固まるみたいに、中で何かがコチコチになってるんじゃないかしら? そう思わない? いや、いいのよ、返事しないで。まわりがぐにゃぐにゃとしていて、それが内部に向うほどだんだん硬くなっていくの。だから私はまず外の皮を切り開いて、中のぐにゃぐにゃしたものをとりだし、メスと ヘら のようなものを使ってそのぐにゃぐにゃをとりわけていくの。そうすると中の方でだんだんそのぐにゃぐにゃが硬くなっていってね、小さな芯みたいになってるの。ボールベアリングのボールみたいに小さくて、すごく硬いのよ。そんな気しない?」
村上春樹 / ねじまき鳥と火曜日の女たち「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon
観音開きの戸のようにメスが入った皮膚を開き
島田 雅彦 / ある解剖学者の話「ドンナ・アンナ (新潮文庫)」に収録 amazon
頭に切れ目を入れ、後頭部から額へと頭皮を剥いでいった。顔の表面、目や鼻や口の部分に、ゴワゴワとした剛毛がかぶさり、頭皮の白い裏側が無影灯にさらされる格好だった。皮一枚で顔が作られているのがよくわかる。安藤は、頭蓋骨をはずして脳を取り出した。
鈴木 光司 / らせん amazon
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(亡くなった庄司の話題が出る)死んだ人の名が人の口から出ると、いつもその人が目の前の風景にとけこんでいるような気がする。ことにこうして野外で唐突に聞くと、涼しい影を落とす木立のざわめきや、霧のように甘く満ちた夏の外気や、きらきらと揺れる水面や、そういうものがとたんに庄司の面影を宿す。
吉本 ばなな「N・P (角川文庫)」に収録 amazon
永久に、中有 の闇へ沈んでしまった。
芥川龍之介 / 藪の中
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