強風が横から吹きつけて顔を打つ。

風が乾いた砂をサラサラと掃くように吹いている

薄靄（うすもや）を生海苔（なまのり）のように町の空に引き伸して高い星を明滅させている暖かい東南風が一吹き強く頬（ほお）に感ずる

前後左右に吹きめぐる風

ときどき思い出したように風が吹き渡る

べたべたした風

受話器をとったとき、そこから聞こえてくるのは激しい風音だけだった。 「ゴオオオオオオウ」という風音だけが、一八八一年のインディアンの一斉蜂起みたいに受話器の中に荒れ狂っていた。彼らは開拓小屋を焼き、通信線を切り、キャンディス・バーゲンを犯していた。 「もしもし」と僕は言ってみたが、僕の声は圧倒的な歴史の怒濤の中に空しく吸いこまれていった。

ステイは絶え間なく、風の具合で、高くなったり、遠くなったり鳴っていた。

ぺらぺらとした細長いブリキの看板は肛門性愛の愛好者のようにそのひ弱な 脊椎 をのけぞらせていた。

高いポプラがゆっさゆっさ風にそよいでいる。