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(以前住んでいた町を歩く)彼は往来に立ちすくんだ。十三年前の自分が往来を走っている! ――その子供は何も知らないで、町角を曲って見えなくなってしまった。彼はなみだぐんだ。何という旅情だ! それはもう嗚咽おえつに近かった。
梶井基次郎 / 過古 ページ位置:52% 作品を確認(青空文庫)
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旅情 生まれ育った土地 フラッシュバック・走馬灯のように蘇る記憶
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前後の文章を含んだ引用
......一軒あった。代が変わって友達の名前になっていた。台所から首を出している母らしいひとの眼を彼は避けた。その家が見つかれば道はおぼえていた。彼はその方へ歩き出した。  彼は往来に立ちすくんだ。十三年前の自分が往来を走っている! ――その子供は何も知らないで、町角を曲って見えなくなってしまった。彼はなみだぐんだ。何という旅情だ! それはもう嗚咽おえつに近かった。  ある夜、彼は散歩に出た。そしていつの間にか知らない路を踏み迷っていた。それは道も灯もない大きな暗闇であった。探りながら歩いてゆく足が時どきへこみへ踏み落ちた。そ......
単語の意味
嗚咽(おえつ)
往来(おうらい)
嗚咽・・・声を詰まらせながら泣く事。むせび泣きのこと。
往来・・・1.行き来(いきき)。行ったり来たりすること。
2.道路。通り。
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