(肋骨の変形)普通なら肋骨は、定規で測ったみたいな精密さで左右対称にふっくらと広がっています。その中に肺と心臓が、心地よく納まっているのです。ところがわたしの肋骨は、それはもういたわしいものでした。落雷にあった巨木の枝のように、ねじ曲げられていました。そのうえ、心臓に近いところの肋骨に限って余計無残に変形していたのです。ほとんど心臓を串刺しにしてしまいそうでした。わたしのかわいそうな肺と心臓は、怯えて震える小動物のように、狭苦しい場所に押し込められていました
小川 洋子 / ドミトリイ「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 ページ位置:72% 作品を確認(amazon)
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肋骨
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......。「一度だけ病院へ行きました。寮の卒業生に整形外科の医者がいるんです。そこでレントゲン写真を見せてもらいました。あなたはご自分の胸の写真を見たことがありますか。普通なら肋骨は、定規で測ったみたいな精密さで左右対称にふっくらと広がっています。その中に肺と心臓が、心地よく納まっているのです。ところがわたしの肋骨は、それはもういたわしいものでした。落雷にあった巨木の枝のように、ねじ曲げられていました。そのうえ、心臓に近いところの肋骨に限って余計無残に変形していたのです。ほとんど心臓を串刺しにしてしまいそうでした。わたしのかわいそうな肺と心臓は、怯えて震える小動物のように、狭苦しい場所に押し込められていました」 先生は呼吸を整えるために、一度深く息を吸い込んだ。喉がかすれた音で鳴った。彼が黙ってしまうと、静けさが二人の間に舞い降りてきた。わたしは窓ガラスのしずくを、......
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鹿の角に似た第四肋骨がもぎとられ
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon
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「骨・内臓」カテゴリからランダム5
(血痕は)、窓をあけると同時に飛び翔った蝶が、窓枠に残して行った鱗粉のようなものにすぎなかった
三島 由紀夫 / 金閣寺 amazon
血がまるでホースのさきから噴き出しでもするように流れ出る。
宇野 千代 / 色ざんげ amazon
口を押さえたホースから、水が飛び散るように血が噴き出した。
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー amazon
ぶつけた向脛をなでてみると、なんだかぬらぬらする。
夏目 漱石 / 坊っちゃん amazon
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