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(死刑を言い渡す)その裁判の時間が訪れた。被告人の顔も青かったが、裁判長の顔も負けず劣らず青かった。 「まず判決理由から読んでいきます」  裁判長は言った。主文を後回しにするということは、十分に死刑判決があり得ることをほのめかすものである。被告人は初めこそ金縛りに遭ったように固まっていたが、途中から判決理由の読み上げそっちのけで 嗚咽 を洩らし始めた。嗚咽というよりは 慟哭 に近かった。法廷内にその声が響いた。  それを聞いて、裁判長の朗読もおかしくなった。声が震えて進んでいかない。真っ青になり、 喘ぐように息をしている。  主文。被告人を死刑に処す……。  そこのところはもうほとんど言葉になっていなかった。
雫井 脩介「火の粉 (幻冬舎文庫)」に収録 ページ位置:2% 作品を確認(amazon)
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前後の文章を含んだ引用
......、ひそめた声で判決文を予行朗読していた。「主文。被告人を死刑に処す……」 そこの部分は何度も練習していた。頬がひくひくと痙攣し、口がうまく動かないようだった。 その裁判の時間が訪れた。被告人の顔も青かったが、裁判長の顔も負けず劣らず青かった。「まず判決理由から読んでいきます」 裁判長は言った。主文を後回しにするということは、十分に死刑判決があり得ることをほのめかすものである。被告人は初めこそ金縛りに遭ったように固まっていたが、途中から判決理由の読み上げそっちのけで嗚咽を洩らし始めた。嗚咽というよりは慟哭に近かった。法廷内にその声が響いた。 それを聞いて、裁判長の朗読もおかしくなった。声が震えて進んでいかない。真っ青になり、喘ぐように息をしている。 主文。被告人を死刑に処す……。 そこのところはもうほとんど言葉になっていなかった。こんなにひどい判決言い渡しは勲も経験がなかった。恐怖を感じ、気がつくと勲も震えていた。 その裁判長はほどなくして退官した。殺人者だろうと誰だろうと、もう人を裁く......
単語の意味
嗚咽(おえつ)
慟哭(どうこく)
喘ぐ(あえぐ)
嗚咽・・・声を詰まらせながら泣く事。むせび泣きのこと。
慟哭・・・慟(なげ[=嘆])いて哭(な[=泣])くこと。悲しすぎて大泣きすること。大声を出して泣き叫ぶこと。「慟」は、訓読みで「なげ(く)」とも読める。「哭」は訓読みで「な(く)」とも読める。
喘ぐ・・・1.苦しむように息をする。息を切らす。
2.貧しさや精神的なプレッシャーに苦しんで悩む。
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検事と弁護士がとめどなく屁理窟を並べ立てる。
阿刀田 高 / 捩れた夜「ナポレオン狂 (講談社文庫)」に収録 amazon関連カテ痴話げんか・口論・言い争い法廷
四十代の男が被害者の遺影を膝の上に置いている。
雫井 脩介「火の粉 (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
(裁判官)黒い法衣をまとった姿は、厳格な学者然としている。
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