先生は眠りにつき、いとこは合宿にでかけ、数学科の彼は行方不明になっている。わたしは本当に一人きりだった。
小川 洋子 / ドミトリイ「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 ページ位置:92% 作品を確認(amazon)
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孤独・一人ぼっち
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......りつぶしてしまおうか迷いながら、掌を広げたままじっと硬くなっていた。しずくはぽたり、ぽたりと落ち続けていた。『一体これは、何なんだろう』 わたしは懸命に考えた。先生は眠りにつき、いとこは合宿にでかけ、数学科の彼は行方不明になっている。わたしは本当に一人きりだった。『Hの鉛筆で数学の問題を解き、スコップで球根を植える、彼の美しい左指はどこへ行ってしまったのだろう』 ぽたり。『どうしてあんな、不思議な色のチューリップが咲くの......
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孤独・一人ぼっちの表現・描写・類語(寂しい・喪失感のカテゴリ)の一覧 ランダム5
邪慳(じゃけん)な風を浴びたような淋しい孤独の川に流される
林 芙美子 / 晩菊・水仙・白鷺 amazon
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私は、まだこのひとと居たかった。このひとの持つ淋しさの層は、人類の歴史と同じくらい厚く、そこに吹く風は誰も振り向かなくなった墓石の上を渡って行くように寒々しかった。それでもそれが人間のもともと持っている淋しさによく似たエッセンスを持っているので、このひとと離れ難く、本当は淋しくて仕方ないのにないことにしてごまかした幾千もの夜の痛みが、一挙に吹き出してきた。そして、その洪水に押し流されないためには、このひとといるしかないように思えた。
吉本 ばなな「アムリタ(下) (新潮文庫)」に収録 amazon
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