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限りない安息が、おもむろに心を満たして来るのを感じた。母のひざを離れてから、何年にも感じた事のない、静かな、しかも力強い安息である。
芥川龍之介 / 偸盗 ページ位置:86% 作品を確認(青空文庫)
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前後の文章を含んだ引用
......見えなければ、地も見えない。ただ、彼をいだいている兄の顔が、――半面に月の光をあびて、じっと行く手を見つめている兄の顔が、やさしく、おごそかに映っている。彼は、限りない安息が、おもむろに心を満たして来るのを感じた。母のひざを離れてから、何年にも感じた事のない、静かな、しかも力強い安息である。―― 「にいさん。」  馬上にある事も忘れたように、次郎はその時、しかと兄をいだくと、うれしそうに微笑しながら、ほおを紺の水干すいかんの胸にあてて、はらはらと涙を落としたので......
単語の意味
安息(あんそく)
安息・・・安らかな休息すること。悩むことなくリラックスして休むこと。
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雫井 脩介「火の粉 (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
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