刑場の露と消える

秋の終わりごろに風もないのに木の葉が一枚落ちるみたいな、そんな感じ（の死に方）

機銃掃射に会い、犬の子のように死ぬ

人間が蛾のようにもろく亡んで行く。

同じクラスの女の子の父親の見舞いに行って余ったキウリをかじった。すると彼もそれを欲しがってぽりぽりと食べた。でも結局その五日後の朝に彼は亡くなってしまった。僕は彼がキウリを噛むときのポリ、ポリという小さな音を今でもよく覚えている。人の死というものは小さな奇妙な思い出をあとに残していくものだ

毎日毎日親たちは泣いた、もう涙がしぼりつくされてもまだ泣いた。なにを見ても泣いて、もうあの子に会えないなら死んだ方がましだと思った。なにもしたくない、そう思った。

店の仕事机でじっとしていると、時々、自分は大丈夫だろうかと不安になるほどの空虚感に見舞われた。この世界と自分との留め金が外れてしまって、何の手触りもなく、時間が周囲を素通りしてゆく。池の底に沈んでいたゴミが、何かの拍子に浮かんでくるように、唐突に、死ぬことはそれほど恐いことではないのではという考えが意識に上った。

生と死を隔てる敷居をまたいでしまった。

眠るように息を引き取る

愁傷